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What's Blue Angels?

世界的に有名なブルーエンジェルズ。これまで数多のアクロバットチームを見てきましたが、なぜかブルーエンジェルズにだけは縁がありませんでした。お陰でMASDFの世界のアクロバットチーム特集でも「ビアロチェルボニイスクリ(ポーランド空軍)があるのにブルーエンジェルズが無い」という、ナゾの現象が生まれてしまいました(笑) 満を持して、ようやく、ついに、いよいよ、まちにまったブルーエンジェルズの登場です。

『密集編隊』

アメリカ海軍のアエロバティックチーム『Blue Angels (ブルーエンジェルズ)』を語る上で、このことばを避けることはできません。ブルーエンジェルズは世界でももっとも緊密で、間隔の狭い編隊機動を得意とします。ダイヤモンド編隊時における翼端とキャノピーの間隔は、なんと18in=46cm!という狭さで、まさに翼が触れ合わんばかりに接近します。ブルーエンジェルズの写真集を楽しんでもらえましたら、次は他のチームを見てください。そのチームの編隊飛行がとてつもなくルーズにみえるはずです。

ブルーエンジェルズは「アメリカンスタイル」の元祖です。その発足は1946年で、海軍元帥ニミッツ提督の命によって結成されました。現存する近代アクロバットチームの中でもっとも長い歴史を有しており、由緒正しき伝統を現在も受け継いでいます。

ブルーエンジェルズ最初の使用機種はF6Fヘルキャットでした。ブルーエンジェルズは第二次世界大戦機を使ったことがある数少ないアクロバットチームです。皆さんご存じのように第二次世界大戦中の戦闘機は傑作機がずらりと揃っています。ところが、第二次世界大戦機を使った常設のアクロバットチームというのは当時殆ど存在していませんでした。なぜなら1000馬力、2000馬力といった強力なエンジンを搭載するプロペラ戦闘機は「後流」が強烈で、密集した編隊を組むことがとても困難だったためです(もちろん戦時だったという理由も無視できません)。

F6Fが使用機だった期間は短く、すぐに新鋭機のF8Fベアキャットへと機種更新し、1949年にはF9Fパンサーがブルーエンジェルズ最初のジェット戦闘機となりました。使用機の変遷は以下の通りです。

  • F6F Hellcat1946
  • F8F Bearcat1946 - 1949
  • F9F-2 Panther1949 - 1950
  • F9F-5 Panther1951 - 1955
  • F9F-8 Cougar1955 - 1957
  • F11F-1 Tiger1957 - 1968
  • F-4J Phantom II1969 - 1974
  • A-4F Skyhawk II1974 - 1986
  • F/A-18 Hornet A/B1986 - 2010
  • F/A-18 Hornet C/D

海軍の名機勢揃い。ってところですね。A-4スカイホークだけ攻撃機で浮いてますが、オイルショックにより燃費の悪いF-4ファントムIIから機種更新せざるを得なかったためです。実はこれには事情があって、元々F11F-1タイガーの後継はA-4になる筈でした。ところが、空軍のサンダーバーズがF-4を運用することとなったため、そのライバル心からF-4になったのです。しかし、結局F-4の時代は長く続きませんでした。エアショーでの墜落事故、そして前述のようにオイルショックによって、本来のA-4へと戻された。というわけです。この時期は空軍のサンダバもF-4からT-38タロン練習機を運用しています。

やはりアメリカ軍のアクロバットチームは戦闘機が似合います。現在ではF/A-18C/Dを運用しており、おそらく海軍の空母艦上からレガシーホーネットが無くなるまで使用機であり続けるでしょう。

ブルーエンジェルズはF-4時代に一度だけ来日したことがあります。小牧基地において開催された第3回国際航空宇宙ショーに招かれたブルーエンジェルズは、はるばる太平洋を越えてやってきました。ところがです。主催者側はブルーエンジェルズに対して最悪の対応をしました。予行演習においてブルーエンジェルズの爆音苦情が殺到したという理由で、航空宇宙ショー開催前にその展示飛行が中止されてしまったのです。

「日本になんかもう二度と来ねぇよ!ヽ(`Д´)ノ」

ブルーエンジェルズのクルーらはこう言い残して、日本を去ったと伝えられています。本当にこういう発言があったのかは分かりません。しかし、狭いファントムのコックピットで太平洋を越えてきたクルー達の心境が、これに近いものであったことに疑いの余地はないでしょう。事実としては、この一件以来40年間二度と来日していません。

もっとも、来日と同時に行なわれた韓国や台湾への来訪も最初で最後となっていることから、考えすぎ...とも言えるかもしれません。元々、アメリカの顔として頻繁に海外ツアーを行なっているサンダーバーズと異なり、ブルーエンジェルズはあまり北米以外へ遠征することはありません。この点、アメリカンスタイルの本家たるサンダーバーズと、元祖たるブルーエンジェルズの大きな相違点と言えるでしょう。

操縦士は基本的に1500飛行時間以上(飛行隊長は3000飛行時間+スコードロンコマンダー)の経験を有する海軍のエビエイターによって構成されます。殆どが海軍軍人ですが、海兵隊からも選抜されます。海兵隊はホーネットの操縦士だけではなく、チームを支援するC-130ハーキュリーズの運用も行なっています。ホーネットの操縦士らは伝統的にGスーツを装着していません。ホーネットのG制限は7.5Gとやや低めなのですが、その肉体的負荷は推して知るべし。です。

ブルーエンジェルズの運用支援を行なうC-130は、世界的にも珍しくそれ自体がアクロバットを行なうという任務を負っています。「ファットアルバート(ふとっちょアルバート)」という愛称をもち、ブルーエンジェルズの一員として、C-130の有する限界性能をみせてくれます。見た目に似合わない動けるデブ。それがファットアルバートです(笑

元祖・アメリカンスタイルのブルーエンジェルズと、本家・アメリカンスタイルの空軍サンダーバーズはお互いに強烈なライバル心を剥き出しにしていることでも知られます。もし、サンダーバーズのパイロットにブルーエンジェルズをどう思うかと質問したならば、きっとこう答えてくれるでしょう。

「彼らはとても素晴らしいチームだよ。マイナーリーグとしてだけど。lolololol!」

ブルーエンジェルズのエビエイターおなじ質問をしてみましょう。

「サンダーバーズは編隊間隔が広すぎて、僚機が見えないんだ。Hahahahahahaha!」

このように両チームの仲の悪さ(という芸?)は度々ジョークのネタになります。ブルーエンジェルズとサンダーバーズのどっちが優れているかは...うーん。難しい問題ですね。例えて言えばリンゴとミカンどっちが美味しい?みたいな。どっちも好きなんだよ。決められマっセン(笑)

ブルーエンジェルズとサンダーバーズ。アメリカンスタイルの元祖と本家は良いライバル関係にあり、互いに刺激しあうことによって切磋琢磨する好例と言えるでしょう。

使用機材 F/A-18C/D Hornet

F/A-18ホーネットは海軍のF-4やA-7の後継となる艦載戦闘機として採用された中型戦闘機です。アクロバットチームの使用機としてはかなり大型の部類に入り、F/A-18以上の大型機となるとロシアンナイツのSu-27くらいのものでしょう。ブルーエンジェルズは密集した編隊飛行を得意とするチームですから、相対的に機体の大きなF/A-18を使うことによって、より編隊が緊密に見えるという、まさに理想的な効果をもたらしています。

また、空母への着艦能力が重用視されているため、低速性能にとても優れています。それは速度性能と引き替えにもたれたものですが、良好な低速性能はそのまま高い運動性に直結します。アクロバットチーム用の戦闘機としては、まさにうってつけの性能を持っていると言えます。

アクロバットには直接関係ありませんが、F/A-18は先進的なアビオニクスを搭載してきたことでも知られています。特に登場当時では世界ではじめて「グラスコックピット」を採用し、優れたレーダーや自己防御システムをディスプレイによって監視・操作できました。また、後期のナイトアタック型では誘導爆弾の運用能力などが加えられ、F/A(戦闘・攻撃)の任務を高いレベルで両立できる万能戦闘機として完成しています。

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