演技解説・写真集
What's PATROUILLE SUISSE?
パトルイユとは「班」とか「〜人隊」を意味します。直訳してしまえば「スイス隊」となりますが、無理に別の言語に訳さずともパトルイユスイスはパトルイユスイスであり「スイス隊」ではないので、日本語にしたようなダサいイメージは無いのでしょう。スイス人の「日の丸飛行隊」というようなニュアンスでしょうか?
その創設は1958年にまで遡り、ホーカーハンターF
Mk58を用いたアエロバティックチームの計画が発足。4機のハンターにより暫定的な活動が開始されます。特別なカラーリングを施されていない通常のハンターでした。
1964年。スイス空軍創設50周年のこの年開かれたスイス万博にて一般国民の前にその雄姿を披露し、大喝采を浴びました。それ以降スイス国内各地のエアショーで活動を行い「Patrouille
Suisse」は名実共にスイス空軍の誇る正式なアエロバティックチームとして活動をしつづける事になります。
公式にもパトルイユスイスの発足年は1964年8月22日とされています。
1970年には1機が追加されて5機編成となり、1978年にはフランスの招待により初の外国(フランス)での展示が実現し、さらに1機が追加された現在同様の6機編成で行われました。
1995年には31年間もの長きにわたり使用されていたハンターからF-5Eタイガーに機種変更し、96年にはスモーク装置を装備し現在に至っています。ハンター時代では下面のみ紅白の国旗塗装でしたが、機種改変と同時に現在のフル塗装が実現されました。
パトルイユスイスは、基本的に半常設半臨時のアエロバティックチームであり、スイス有事の際には機体とチームメンバーは即座に実働部隊に編入されます。そのためF-5Eは機関砲を搭載したままであり、パイロットもエアショーシーズンの開幕(春)にあわせて選出され、僅か2週間の間に1日2回の訓練フライトを実施するという、厳しい制限の元運用されています。
シーズン開幕後も公式な訓練は2週間に1度のフライトに限られています。なお、使用機材である赤と白の派手なF-5Eはパトルイユスイスとしてのフライトが予定されていない日には、面白い事に地対空火器の標的として使用されています。スイスは世界の中でも裕福な国の一つですが、永世中立の小国、スイスの政情を反映しているとも言えなくも無いかもしれません。
私個人的な感情を言えば、このパトルイユスイスというチームが大変気に入っています。
さすが戦闘機だ!と思わせる速度感を発揮しつつ、それでいてヨーロピアンスタイルをうまく取り入れた、流れるような編隊演技は独自の「スイススタイル」をうまく確立し、同じ6機編成ながらブルーインパルスとは全く異なる演技が楽しめました。
また、T-4やホークなど「かわいい」部類に入る飛行機と違い、F-5Eは「カッコいい」と思いませんか?
ちなみにスイスにはもう一つアエロバティックチームが存在します。「パトルイユスイス」のようなたいそうな名前こそありませんが、7機のピラタスPC-7を使用しスイスや各国で展示飛行を行っています。
さて、ここでクエスチョンです。F-5Eを装備するパトルイユスイスが訓練に制限を受けているのに、何でもう一つのアエロバティックチームがあるのでしょうか?
ヒント。
わが国の航空自衛隊のT-3に代わる初等練習機採用計画でPC-7が売り込みにやってきました
(この件については一悶着有ったのですが)。
はい、答えは明確ですね。スイス産の航空機、PC-7を売り込むためのデモンストレーションとしての役割を担っているのです。
パトルイユスイスの使用機体はF-5Eタイガーが6機と、欧州勢としては珍しい戦闘機を使用したチームです。
F-5EタイガーIIは日本にはなじみの薄い戦闘機ですが旧西側の多くの国で使用されました。
オーストラリア、バーレーン、ボツワナ、ブラジル、カナダ、チリ、エチオピア、ギリシャ、ホンジュラス、インドネシア、イラン、ヨルダン、ケニア、リビア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、オランダ、ノルウェー、パラグアイ、パキスタン、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、韓国、南ベトナム、スペイン、台湾、タイ、チュニジア、トルコ、ベネズエラ、イエメン、そして開発国アメリカとスイスです。
Fナンバーの数字が小さいので古く感じがちですが、世代的にはF-15と殆ど同等です。
が、機体の性格上当時の最新技術で性能面で欲張らず旧来技術機を安く作ったF-5Aをレーダーの追加や、エンジンを中心に大規模改修を行った機がF-5Eですから、アクロバットで重要な機敏さ等性能面では、練習機を用いたヨーロピアンの他チームよりもやや劣っていることは否めませんが、演技構成のうまさでカバーし、それをまったく感じさせません。
F-5Eは旧式とは言え戦闘機には違いありませんから、他の国の同じような形をした練習機(T-4,アルファジェット,ホーク...etc)とは一味違った演技が楽しめます。そう、スピード性能ではそれらの期待をはるかに凌駕しているのです。
スイスのF-5EはAGM-65マベリック対地ミサイルの運用能力と、チャフ・フレアディスペンサーを装備した独自改修型が配備されており、パトルイユスイスの最終演技“フィナーレグランデ”ではフレアを投下し花を添えます。同種の機動は、いくつかのアエロバティックチームでも行われますが、実働戦闘機ならではのオリジナリティで観客を魅了します。
チャフ・及びフレアは手動による単発発射か全カートリッジ一斉発射の2種類から選択します。。フィナーレグランデの場合は勿論全弾発射で、1機15発合計90のフレアの花が開花します。
2006年現在、F-5Eの退役に伴うパトルイユスイスの代替機については未定のままです。可能性は低いがF/A-18を使用するのか、もしくはPC-7チームがパトルイユスイスに昇格するのか、F-5Eの後が見当たらないのが現状です。
ちなみに、ファンボローエアショー2006のグリペンのブースでは将来スイスにも売り込むぞ見たいな事が書かれていましたが、グリペン6機のチームなんてどうでしょう!?
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