演技解説・写真集
What's 雷虎小組?
「トラストミー ウィーアーザベスト!(我々が最高と信じろ)」
近年まれに見た愚宰相、ルーピー鳩山のせいでトラストミーとかギャグにしか聞こえなくなった昨今ですが、中華民国(台湾)空軍のアエロバティックチーム「雷虎小組(リーフーシャオズ/らいこしょうそ)」はこのような合い言葉を表に立てて活動しています。
そのベストの演技を見てきてやろうではないか!と思い立ったのは2009年。はるばる雷虎小組の本拠地、台湾の岡山(ガンシャン)空軍軍官学校を訪れるも、残念なことに台風襲来。100年に一度とも言われる大水害でエアショーどころでは無くなってしまい、直前になってキャンセルされました。しかたにゃーので、台湾観光に切り替えていました(´・ω・`)
それから1年と数ヶ月後の2010年12月、ようやく雷虎小組を見る機会に恵まれました。ベストかはどうかはともかく(笑)、十分にトラストミーの期待に応えるものでした。雷虎小組の最大の特徴はアクロのレギュレーションが甘いということです。観客の頭上でループ、下向き開花、クロスとか他のチームでは考えられないような機動を実施します。その迫力はまさに圧倒的!今まで何十ものチームを見てきましたが、「怖い」と感じたのは雷虎小組のみです。それだけでも見る価値があったと言えたでしょう。演目は前半が編隊による旋回などを実施し、途中編隊を分けて後半部に入るなど、ヨーロピアン風の味付けとなっています。
雷虎小組は、日本の隣国にあるチームにもかかわらず、日本国内では全く知られていません。英語名「Thunder
Tiger」という勇ましき名を有するこのチームは、台湾国産のAT-3自強ジェット練習機を7機使用しています。
台湾空軍には経国やミラージュ2000などのいくつかのデモンストレーションチームが有りますが、編隊アクロを実施するのはこの雷虎小組のみとなっています。
雷虎小組の歴史は1954年に台南航空連隊で発足した「第1戦闘飛行大隊 特技飛行小組」までさかのぼれます。特技飛行小組はF-86軍刀4機編成で1954年8月14日に最初の展示を実施しました。我らがブルーインパルスが1960年生まれですから、雷虎小組の方が僅かに歴史が長いのです。1959年にはなんと12機編成にもなりました。現在世界最多のフレッチェ・トリコローリですら10機ですから、驚きです。特技飛行小組の機種は1967年にはF-5A/B自由闘士となり、1975年にはF-5E/F老虎へ機種更新されています。現在のAT-3自強となったのは1988年で、同時に岡山の空軍軍官学校へと所属し、現在に至っています。
「三色飛燕」塗装は雷虎小組だけの特別なものではなく、全てのAT-3に施されています。差は尾翼の文字が「雷虎」であるか「筧橋」であるかの違いしか有りません。
筧橋とは大陸時代に空軍軍官学校が有った場所の地名で、中華民国(台湾)空軍にとってその歴史の始まりとも言える空戦が行われた場所でもあります。
抗日戦争中の1937年、筧橋空軍軍官学校上空における航空戦で、帝国海軍木更津航空隊の96式陸攻を6機撃墜し、中華民国(台湾)空軍は大勝利を得ました。
日本側の損害記録にそのような事実は無いのですが、現在でも筧橋の名は台湾空軍にとって大きな存在となっています。雷虎小組の機のみ、尾翼部の文字が「筧橋」から「雷虎」へと差し替えられています。
なお、パイロットは全員空軍軍官学校の教官です。機体も普段から訓練に使われているようです。かつての戦技研究班時代のブルーインパルスみたいですね。
漢翔航空工業(AIDC)は独自の技術力を有していることで知られ、経国戦闘機をはじめとした数々の軍用機を設計しました。近年ではMRJのサプライヤーとしてスラット、フラップ、胴翼フェアリング、ラダー、エレベーターなどを三菱航空機に納入しています。
その漢翔航空工業が設計したAT-3自強は1980年に初飛行し、私がちょうど雷虎小組を見に行った2010年はちょうど30年の節目の年でした。AT-3は「高級教練機」という分類にあるようです。
エンジンはハネウェルTFE731で、これはスペイン空軍パトルーラ・アギラのC101アビオジェットと同じものです。航空自衛隊U-125Aにも搭載されているエンジンですから、飛行時の音はそっくりです。設計もC101によく似ていると言えましょう。
かつてはこの自強を本格的な攻撃機に改造しようと言う計画がありました。なんとこの小さい機体に対艦ミサイルを2本搭載(!)するという無茶っぷりでした。
ちなみにAT-3は有事の際に変形します。
ほらね(笑)
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