第98回:レーダー反射断面積と探知距離

●探知距離はレーダー反射断面積の四乗根に比例

レーダーに映らない軍用機を「ステルス機」と呼ぶことは一般にも広く知られています。
我々軍用機マニアになると、それがレーダー反射断面積「RCS」という数値によって左右され、決してレーダーに対して無敵ではないこと、そして実際に撃墜されたことを知っています。では具体的にステルス機がどの程度レーダーに映りにくいものなのでしょうか。
航空情報9月号においてF-22の記事を執筆しましたが、その際にRCSに対する探知距離をグラフ化したものを作成しました。その副産物である、レーダー反射断面積と各レーダーにおける探知距離の一覧表を掲載します。それぞれのレーダーの能力と、それに対するRCSの効果を見てみましょう。
レーダー反射断面積の単位は平方メートル、探知距離の単位はキロメートルです。

(レーダー視程の推定はJane's Avionics 2008-2009より)

レーダー断面積 AN/APG-77
F-22
AN/APG-79
F/A-18E/F
N035 Irbis E
Su-35BM
CAPTOR
Typhoon
10 大型戦闘機 355.66 195.61 405.45 147.6
9 F-15/Su-27 346.41 190.53 394.91 143.76
8 など 336.36 185 383.45 139.59
7 325.32 178.92 370.86 135.01
6 313.02 172.16 356.84 129.9
5 299.07 164.49 340.94 124.11
4 小型戦闘機 282.84 155.56 322.44 117.38
3 F-16など 263.21 144.77 300.06 109.23
2 237.84 130.81 271.14 98.7
1 4.5世代RO機 200 110 228 83
0.9 タイフーン 194.8 107.14 222.07 80.84
0.8 など 189.15 104.03 215.63 78.5
0.7 B-1B 182.94 100.62 208.55 75.92
0.6 176.02 96.81 200.67 73.05
0.5 168.18 92.5 191.72 69.79
0.4 159.05 87.48 181.32 66.01
0.3 148.02 81.41 168.74 61.43
0.2 133.75 73.56 152.47 55.51
0.1 B-2A 112.47 61.86 128.21 46.67
0.09 109.54 60.25 124.88 45.46
0.08 106.37 58.5 121.26 44.14
0.07 102.87 56.58 117.28 42.69
0.06 98.98 54.44 112.84 41.08
0.05 94.57 52.02 107.81 39.25
0.04 89.44 49.19 101.96 37.12
0.03 83.24 45.78 94.89 34.54
0.02 75.21 41.37 85.74 31.21
0.01 F-22/F-35 63.25 34.79 72.1 26.25
0.001 LO/VLO機 35.57 19.56 40.54 14.76
0.0001 20 11 22.8 8.3

被探知距離はRCSの4乗根に比例します。
すなわち、被探知距離を半分の1/2にするには、RCSは1/16にしなくてはなりません。RCS10平方メートルの戦闘機の1割まで被探知距離を短くするには、0.001平方メートル(1/10000)までの低減が必要となります。
よって、大幅に削減するのは難しいですが、「ステルス性に配慮する」だけでレーダー視程を押し戻すのに大きな効果が得られることが分かります。


※RO機=観測性削減機 VLO/LO機=(超)低観測性機=いわゆるステルス機
※レーダー視程やレーダー反射断面積は「推定値」です。
※レーダー視程は標的が高速接近中、かつルックアップ時に最大性能を発揮できます。
※開発元が自ら宣伝しているイルビスEをのぞき、レーダーの性能は公表されていません。
※ステルス機のレーダー反射断面積は資料元によっては10倍近く変化します。
※「だいたいあってる」かもしれませんが「正確ではありません」。
※知っている人は言ってはいけない事になっています。本当のところは誰も分かりません。


(更新日 2009年8月24日)



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