第86回:飛行機を撮ろう!ヘリコプターの撮り方

ヘリコプターの撮影はカメラマン泣かせ

前回、戦闘機の撮影はシャッター速度が命である。と、書きました。
基本的に他の軍用機の場合も同様です。超望遠で撮影しなくてはならない以上、シャッター速度が高いほうが有利です。しかし、その基本原則を泣く泣く崩さなくてはならない被写体が有ります。プロペラ機ヘリコプターです。
プロペラ機とヘリコプターは、回転する翼があるため、高速シャッターを切ると、その回転が停止してしまい、とても不自然な写真になってしまいます。

こんな感じに。ローターの回転が感じられず、まるで躍動感が有りません。不自然ですらあります。
特にCH-47チヌークのような巨大なローターを持ったヘリコプターは、回転数が低いためにこうなりやすい傾向があります。
ローターの回転を感じさせるには、シャッター速度を下げなくては成りません。
具体的には、最高でも1/250以下。可能なら1/125…。そう。ヘリコプターの撮影は、高速のジェット機以上に難しいのです。
(多くの場合シャッター速度を落とすだけで十分な露出が得られるので、感度を最低にするのをお忘れなく。)

脇をしめろ。息を止めろ。ライフル射撃するつもりで。

まずは、下のリンク先を参照してください。
(デジタル一眼レフカメラの正しい構え方をマスターしよう!)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/tec/camera2/20051017/113882/
航空祭でも、悪い例そのままのスタイルで撮影している人をよく見かけます。
適切な構えは基本中の基本ですから、必ず気をつけるようにしましょう。手ブレとの真剣勝負をしなくてはならない、ヘリコプター相手ならば尚更です。
あとは、以下の手順にそって撮影を行います。
@ シャッターを半押し、コンティニュアスAFとISを起動。標的をロックする。
A 苦しくない程度に深呼吸し、細く、ゆっくりと息を吐く。
B 息を止め、シャッターを押し数枚連写する。

まるで自動ライフルの射撃のようですね。望遠レンズ付きカメラか、ライフルかの違いこそあれ、標的を狙うという行為自体はそう変わらない行為なのかもしれません。
@〜Aは、全ての被写体に有効ですが、Bの連写に限り、普段より多めに連写したほうが良い結果を残せる事が多いです。というのも、固定翼機にくらべてヘリコプターは低速ですから、連写時最大の欠点であるミラーアップによるファインダー像の消失が発生してもフレーミングが比較的容易なのです。
また、緊張状態でシャッターボタンに数グラムの力を加えるという行為は、思いのほか安定を崩します。連写するという事はシャッターを押しっぱなしにする、すなわち再び安定状態を維持すると言う事でもあり、ブレの低減が可能となります。
ライフルの場合は発砲による強烈な反動でブレが生じるため、2〜3発程度で一旦止めて、再度引き金を引いた方が有効に弾薬を使えるそうですが、カメラでそれに当たる「ミラーショック」は、引き金をひくのに相当する「シャッターを押す」という行為に比べ、遥かに小さい影響しか及ぼしません。この一点においてはライフル射撃と望遠での撮影の大きな違いと言えるでしょう。

なおヘリコプターのローター回転数は状況に関わらず、ほぼ一定に保たれています
パイロットはコレクティブと呼ばれるローターの迎え角を制御するレバーを握り、回転数を制御するスロットルの操作は自動で行われます。

・スペック値

機種 ローター直径 回転数 先端速度 角速度 S速度250 S速度125
CH-47 60ft 225RPM 706.5ft/sec 3.75周/sec 5.40度 10.80度
UH-60 53.7ft 285RPM 800.9ft/sec 4.75周/sec 6.84度 13.68度
AH-64 48ft 289RPM 726.0ft/sec 4.82周/sec 6.94度 13.88度

作例

・1/250

上の表にあるとおり、CH-47を1/250で撮影した場合、5.4度だけローターを回転させる事がでます。回転を感じられる殆ど最低のレベルです。
しかし、写真のようなトンでもない機動をされてしまっては、欲張って1/125秒以上にしようものなら全体がブレてしまう可能性が大。あちらを立てればこちらが立たぬ。その加減が難しいのです。
もし、CH-47のローターを一周回転しているように見せる(三分の一回転させようとする)場合は1/11秒で撮影しなくてはなりません。1/11秒なんて設定のあるカメラは恐らく無いので、1/10か1/8まで速度をおとす必要があります。望遠レンズを使用した手持ち撮影ではまず無理です。三脚を用いてもヘリコプターの機動自体でブレが発生するので、難しいでしょう。ホバリング時なら、なんとか可能かもしれません。

同じく1/250で撮影。小型で軽快なリンクスはローターの回転数も高く、それほど低速シャッターを必要としません。

同1/250でOH-1を撮影。
激しい機動を行うヘリコプターを撮影する場合は1/250を一つの目安として多用しています。特別回転が美しくもなければ、かといって悪くも無い無難な写真が撮影できます。
飛行機写真家の間では、これをチキン野郎の1/250と言います(言わない言わない)。

・1/200

ハボック。1/250よりかは回転が大きいですが、理想を言えばもうちょっと頑張りたいところです。
でもまあ、この程度回転させればまずまずなのではないでしょうか。


同ハインド。
あまり欲張ると、今度は機動でブレて台無しになってしまいますからね(既にブレてる)。

・1/125

UH-60。1/125ですから上記の計算上スペック値によると13.68度の回転が得られています。
ブレードは影として写り、ヘリコプターを撮影する上でほぼ理想的な設定です。
ただ、失敗も多くなるのが悩みどころ。

・1/40

アグスタ・ウェストランドA109。(ゴミがあああああ)
三脚を用いない望遠レンズで1/40のスローシャッターをキメるのは至難の技ですが、その頑張った証はこうして写真に現れます。文句無しの回転です。



シャッター速度1/640の例外的な写真。
後ろのU-125Aを流したくなかったので、ブレードが停止するのを覚悟で、あえて高速シャッターを切りました。
アングル上、ローターが停止していても目立ちませんし。
…というのは嘘。U-125Aが突っ込んでくると気が付いた時には既にパラメーター設定を弄る時間的余裕も無く、ただチャンスを逃すまいとカメラを向けました。


1/320のOH-6D。こちらのアングルも、ローターが目立たないので、余り回転を気にする必要は有りません。


同じく1/320で撮影したOH-1。小型のヘリは1/250以上でもそれなりに回転が保たれます。


なお、ヘリコプターをビデオ撮影する際、シャッター速度とヘリコプターのローターを同期させると、ローターを停止させたまま機動するシュールな動画が撮る事ができます。
必要なシャッター速度は、ローター回転数(RPM)÷60×ブレード枚数です。
CH-47の場合は1/11、UH-60とAH-64は1/19。OH-6Dなんかはブレードが短い上に多いので、試しやすいかもしれませんね(回転数は自分で調べてください)。

飛行中のプロペラ機は妥協できる

ターボプロップ機やレシプロの固定翼機は、状況によって異なりますが2000RPM以上と、ヘリコプターの10倍近いプロペラ回転数を維持していますので、高速シャッターを切っても完全にプロペラが停止してしまうような事は滅多に無く、それほど低速シャッター速度を必要としません。

1/800で撮影。これだけの高速シャッターを切っても、停止してしまう事は有りません。


1/250で撮影。特に離陸時はすこしシャッター速度を下げてやればこのとおり、完全に回転が見えなくなります。


1/125で撮影。ターボプロップ機はエンジンの構造上と、可変ピッチプロペラによりアイドリング中でもあまり回転数が下がらないので、着陸進入やタキシング中であっても少しシャッター速度を落とせば簡単にプロペラが一周します。現在、日本で見ることのできる軍用プロペラ機は全てターボプロップを動力としています。

1/800で撮影。レシプロエンジンのアイドリング回転数はかなり低いため、プロペラの回転数も落ちこみます。

ヘリもプロペラも、やっぱりベストは無い

ベストは撮影者自身が決める事です。
ヘリコプターのローターが一周しているように見せたければ1/20、1/10とシャッター速度を落とさなくては成りませんし、激しい機動を行うヘリをブレさせたくないならば、チキン野郎の1/250で妥協するのも十分有りでしょう。
アマチュアは「写真を売る」事が目的なのではなく「撮る」事自体が目的なのですから、変に気張らずに、楽しみながら、色々チャレンジしてみてください。
プロペラ飛行機についても同様です。

(更新日:2009年2月25日)


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