第87回:飛行機を撮ろう!流し撮りに挑戦

流し撮りとは?

流し撮りとは、移動する物体や人物を被写体とし、カメラを追随させることによって、被写体を固定したまま背景のみをブレさせて、速度感を強調する技法を言います。
飛行中の飛行機を撮影する場合、多くは青空か雲の「感情の無い背景」になりますから、基本的にローパスと離着陸の地形が写りこむ状況に限定されます(もちろん雲を背景とした流し撮りができない訳でもありませんが)。
速度感を強調し、躍動感をかもしだすのが流し撮りの利点なのに、飛行機が最も低速な状態を狙う訳です。皮肉ですね。


シャッター速度1/250のPC-9と、1/1000のグリペン。もちろん戦闘機であるグリペンの方が速いのですが、練習機PC-9のほうが速度感溢れるよう感じられます。

基本的な知識

基本は前回のヘリコプターの撮影と殆ど変わりません。意図的にブレを発生させるのですから、当然ブレやすい条件がそのまま流しやすい条件と合致します。
今回は勝手に「回る」ローターを撮影するのではなく、自分自身が「回る」という点で異なります。ですから、
1:角速度が速い(被写体が高速かつ近いほど)
2:焦点距離が長い

以上の二つの要素を満たしていればいるほど流しやすくなり、必要なシャッター速度は1、2項の状態によって大きく上下します。十分に加速した小型の戦闘機を比較的近い距離で狙うのと、大型旅客機を離れた距離で撮影するとではシャッターを開いている時間中にカメラを動かす角度が違ってきますから、前者では1/125も落とせば十分な躍動感が得られるかもしれませんが、後者では殆ど効果が無いでしょう。

1/320 300mm
近い距離を望遠で狙いました。、流しやすい条件が揃ったため1/320でもそこそこの流れが生じています。
フレーム一杯に被写体を捉えると、背景の流れ以上に速度感が強調されます。


1/80 130mm
一つ上のT-4の写真よりも4倍も遅いシャッター速度で撮影しましたが、被写体までの距離が遠く、巨大なB747の全体をフレーミングするため広角側で撮影した事、そして背景が単調であるため、速度が感じられません。
B747もT-4も着陸速度は殆ど同じです。条件によってここまで変わるのです。状況に応じたシャッター速度を選びましょう。


1/100 400mm
アクロバットチームは着陸が連続しますから、流し撮りの練習にはもってこいです。ジェット戦闘機の離着陸を流したい場合は最高で1/250、できれば100台、頑張れるのならば二桁まで落としましょう。


左から、1/800、1/160、1/80 約300mmで撮影。プロペラの流れ具合にも注目。
もちろん、シャッターを開けば開くほど全体がブレて失敗を量産する可能性も高くなりますから、自分の勇気と技量に相談しましょう。一番左の全く流していない写真も、私は嫌いでは有りません。


1/30 400mm
思い切ったスローシャッターで、背景の輪郭が分からないほど完全に流れました。成功とは言い難いですが、失敗ともいえません。失敗してもどうでもいいT-4(笑)なら冒険できるというものです。


1/160 400mm
機体にもブレが発生してしまいましたが、直線運動する飛行機を回転運動で追いかけるという特性上、見かけ上の角度は常に変化しますから、被写体にも必ずブレが生じます。機首部に合わせて流したため、機体後部はブレてしまっています。


1/250 400mm
特に編隊の場合、顕著に表れます。真中の機に合わせて流したため手前と奥にブレが生じています。


1/20 100mm
格納庫の影から顔をだした見事な満月を「主役」とし、背景を固定して逆に飛行機を流してみました。背景を流すだけが流し撮りでは有りません。
柵でカメラを固定して撮影しました。(カーボンの三脚欲しいな〜)

流し撮りのテクニック?

いつも通りにコンティニュアスAF、連写の設定とし、また、手ブレ補正に上下方向のみを補正するモードがある場合は、必ず選択しましょう。
流し撮りと言っても、シャッター速度を遅くするだけの事です。高速シャッターにおける手ブレ抑制と何一つ変わりません。体の重心を据えて腰を使って回転して手ブレを抑制しましょう。

ヘタクソな私が言うのもなんですが、読み聞きするだけで上手くなるテクニックなんて有りません。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」とは言いますが、技術ばかりは他者の経験は自分のものにはなりません。練習と実践あるのみです。さあ、カメラを持ってエアショーや飛行場へ出かけましょう!

(更新日:2009年3月10日)


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