第76回:サルでも分かるトーネードの見分け方 

IDS ADV ECR


F-2支援戦闘機ってF-16の日本版。
F-15JってF-15Aでしょ?

んな分けないだろ。と、日本の多くの戦闘機ファンは憤慨すると思います。
でも、これが地理的に疎遠な欧州の主力機、パナビア トーネードになると特徴的なバリエーションがありながらも、みんな同じでしょ。といわれる事が多いのは悲しい事です。
地球の裏側にしかないから、あまり興味が向かないのも仕方が無い事かもしれませんが、前記の戦闘機のように似て非なるものであって、各々が持つ特徴は全く異なっています。
トーネードは可変後退翼やスラストリバーサーを装備し、実戦経験も豊富で、特に湾岸戦争初日における超低空阻止攻撃、対防空網制圧や、飛行場破壊は甚大な 被害を出しながらもイラクの防空網に効果的な一撃を与えました。そんな面白い戦闘機を「トーネード」と、ひとくくりにしては勿体無い事この上ありません。

トーネードは大きく分けて3種類が存在します。
Tornado IDS
Interdictor strikeの略で、敵地攻撃の意味を持つ攻撃機型ですべてのトーネードの基本となります。
採用国は英独伊サウジ
英国ではTornado GR.1 Tornado GR.4 Tornado GR.4Aと呼称されます。

Tornado ECR
IDSから電子戦に特化し、Electronic Combat Reconnaissanceの略で電子戦闘偵察の意の名を持つ電子戦機。
採用国は独伊

Tornado ADV
ADVだけは他のトーネードとは違った戦闘機型でAir Defense Variantの略。すなわち防空型の意。
採用国は英伊サウジ
Tornado F.2 Tornado F.3Tornado ADVに分類されます。

以上、3種類のトーネードはそれぞれの任務に応じた武器やシステムを搭載しており、前述したF-15DとF-15Eの違いと同等の差が有ります。それぞれの外見的特長を見ていきましょう。


Tornado IDS(攻撃機)
機関砲両舷2門搭載
(ただしGR.4は右舷に一門)
給油装置が右舷に半格納


Tornado ECR(電子戦機)
FLIRを搭載。機首下にでっぱり
FLIR搭載に伴い機関砲を撤去
AGM-88 対レーダーミサイル装備
給油装置が右舷に半格納


Tornado ADV(戦闘機)
・給油装置が左舷に完全格納
・機関砲左舷撤去し右舷1門搭載
・機首部が他よりかなり長い
・尾翼上部のアンテナ無い

英国のトーネードをもう少し詳しく見てみましょう。

左舷に機関砲の搭載が確認できますからTornado IDSであることが分かります。正確にはTornado GR.1
さらに細かく言えばGR.1の中にもGR.1 GR.1A GR.1Bのようなサブタイプまでありますが、それについてはまたの機会で。
GR.1は全機がGR.4に改修か退役済みです。


こちらはTornado GR.4です。同じIDSであるGR.1と何が違うのでしょうか。
Tornado GR.4GR.1からの改修機で、機首下部にFLIRの搭載が行われたため左舷の機関砲が撤去されました。
また、右舷には半格納式に空中給油プローブを装備しました。IDSでもいろんな種類があるのです。


見るからに機首が長く、給油プローブも見えません。もうお分かりですね。戦闘機型のTornado ADVです。
正確にはTornado F.3
なお、つぶした左舷の機関砲スペースは空中給油装置の格納に当てられています。


機首下にでっぱりが確認できます。また右舷に機関砲が搭載されていません。
機関砲搭載無しのドイツのTornado ECRだと分かります。


一番大きいスカイフラッシュミサイルはADVのみが装備します。


トーネードIDSの特徴的な武装、巨大な対滑走路用のJP233ディスペンサー爆弾。

以上。たったこれだけ知っていれば簡単にのトーネードの最低限の区別はできます。
今後、「トーネード」としてではなく「トーネードIDS」「トーネードECR」「トーネードADV」と意識的に区別してみてください。
今まで以上にトーネードを深く見ることができるでしょう。

(更新日:2006年11月21日)


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