圧縮効果?
圧縮効果とは望遠レンズによって引き起こされる写真表現の一種で、奥行き空間が喪失し、「手前」に存在する被写体と「奥」に存在する背景が接近して見える事を言います。
言葉で説明するよりも、実際の写真を見てみましょう。
露出時間 : 1/100秒 レンズF値 : F10.0 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 41.00(mm) |
露出時間 : 1/1250秒 レンズF値 : F5.0 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 200 レンズの焦点距離 : 135.00(mm) |
時間は異なりますが、ほぼ同じロケーションで撮影したA-37ドラゴンフライとAC-47スプーキー。
広角レンズで撮影したドラゴンフライの写真と比べると、望遠で撮影したスプーキーのそれは、まるで背後の山が迫り来るような迫力が感じられます。
このように広角レンズで撮影した写真は近いものは大きく、遠いものは小さく写るのに対し、望遠レンズで撮影した写真は距離感を減衰させ、全てのものが大きく、手前に有るように表現されます。
露出時間 : 1/250秒 レンズF値 : F8.0 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 34.00(mm) |
露出時間 : 1/500秒 レンズF値 : F7.1 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 200 レンズの焦点距離 : 100.00(mm) |
次はF-15Eストライクイーグル。どっちが望遠で撮影された写真かは一目瞭然です。
望遠レンズで撮影すると被写体が大きく写るなんて当たり前じゃん…って感じですが、その当たり前の特性を「意識」して使った撮影を楽しんでみましょう。
遠近感を殺す
露出時間 : 1/200秒 レンズF値 : F25.0(笑) 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 200 レンズの焦点距離 : 190.00(mm) |
ファンボローエアショーのメインイベントであったエアバスA380のデモフライトが終わり、今まさに地上に舞い降りんと2番3番エンジンを逆噴射しようとしている写真。
デモフライト終了後、広角レンズに付け替えて全体を着陸を撮影するか、それとも望遠レンズのまま後ろに下がって撮影するか少し迷いました。ふと人を写しこんでA380の大きさを強調するイメージが思い浮かび、思い切って望遠レンズで狙いました。
結果、大正解でした。群集が巨大なA380に押しつぶされそうな表現ができました。もちろんこれはレンズの圧縮効果の賜物であり、滑走路と観客エリアはA380の翼幅よりも距離が開いています。
(両写真ともオリジナル紛失のため撮影時のデータなし)
被写体同士の間隔が狭まるように見えるのですから、多くの飛行機が重なった状態で撮影すれば非常に狭い空間に多数の機が密集しているように見せることが出来ます。
翼が触れ合わんばかりに各機が接近したような写真。無理に全体をフレーミングしようとせずに、はみ出るのを覚悟で思い切って望遠で寄せてみるのも一興です。
地上展示を撮る
望遠レンズの特性については大体理解いただけたと思います。続いて、その特性を地上展示の撮影に応用してみましょう。地上展示において望遠レンズを使用すると、空間の広がりを潰してしまうことから飛行機の持つシルエットや特徴を強調し、凄みを持たせる事が出来ます。優美な曲線を持つ飛行機はより優美に、無骨な飛行機はより無骨に、平べったい飛行機はより平べったく、重い飛行機はより重そうに。そして大抵の場合、その魅力を倍加させます。
露出時間 : 1/800秒 レンズF値 : F5.0 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 250.00(mm) |
( ´ ・ ω ・ ` ) やぁ。こんな感じにね?
露出時間 : 1/800秒 レンズF値 : F7.1 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 200 レンズの焦点距離 : 100.00(mm) |
露出時間 : 1/640秒 レンズF値 : F7.1 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 100.00(mm) |
キモイ飛行機はよりキモく!
露出時間 : 1/200秒 レンズF値 : F6.3 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 310.00(mm) |
ほーら、あの土臭いブロンコすらもカッコいいでしょう?
露出時間 : 1/250秒 レンズF値 : F7.1 露出制御モード : 絞り優先AE ISO感度 : 200 レンズの焦点距離 : 400.00(mm) |
露出時間 : 1/400秒 レンズF値 : F5.6 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 150.00(mm) |
飛行機の、ある一部を望遠で切り出すように撮影すると独特の味を醸し出す事ができます。
特にミサイルや爆弾はその獰猛さが顕著に強調されます。 「強調」これこそが望遠レンズで撮影する醍醐味と言えるでしょう。
露出時間 : 1/250秒 レンズF値 : F8.0 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 55.00(mm) |
露出時間 : 1/250秒 レンズF値 : F5.6 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 400.00(mm) |
イギリス救国の戦闘機、スピットファイアが勢ぞろいしました。思い切って最大望遠で機首のみを切り取ると、見違えるように迫力が増しました! 圧縮効果で遠近感を無くし、より密集させているように見せています。
また、被写界深度は焦点距離の2乗に反比例する事を利用し、さらにF値を下げて奥の機体をボケさせてみました。飛行展示の撮影は常にピンぼけとの戦いですが、それをレンズの特性として意図的に利用する事も出来ます。
露出時間 : 1/640秒 レンズF値 : F5.0 露出制御モード : シャッター速度優先AE ISO感度 : 100 レンズの焦点距離 : 100.00(mm) |
同じ状況で今撮影するとしたならば、もう少しF値を下げて撮影してました。
ほぼ開放F値(4.5)に近いのですが、よく後ろのKC-10まで被写界深度が取れたなあ。
最大の敵。それは……。
地上展示を望遠で撮影するのはとても難しいのです。 ブレやピント? いえ、もちろん望遠での撮影ですから手ブレしやすくはなります。でも、こういった撮影手法が効果を発揮するのは飛行機が地上にある間に限られますから(遅いか静止している)、それほど気にする必要はありません。最大の敵は「他人」にあります。
つまりこう言う事です。オッサンどいてえええ!!(><)
望遠で狙うためには被写体となる飛行機からは数十メートルの距離をおいて撮影しなくてはなりません。近すぎると本当に極々一部しか写りませんし、そもそもピントすら合わせられません。
人が多い場所で撮影するのはほぼ不可能なのです。この爆装したF-15Jも5分間人通りが途切れるのを待って待って待って、ようやく撮れた写真すらこのざまでした。
「航空祭」は「撮影会」ではないので、チャンスを高めるためには朝一番に乗り込むか、終了後に粘るか、どちらかを選ばなくてはならず、根気と、そして運が介在します。
→
朝一番→昼頃 こうなったらもうお手上げ /(
^o^ )\
さあ、あなたも望遠を用いた地上展示の撮影にチャレンジしてみましょう!
そして、ファントムぅぅ、カッコいいよお(*´д`*) と、ニヤニヤ楽しみましょう!
(更新日:2009年5月20日)
目次へ戻る