第21回:ミサイルの射程は飾り(距離編)

ロケットモーターの燃焼時間は数秒〜10秒

21回目はミサイルの射程についてにしたいとおもいます。

例には速度が秒速800mで飛翔し最大射程50kmの架空の空対空ミサイルを使用します(以降、単に「ミサイル」)。

さて、この射程50kmですが一体何を根拠に50kmとしてるのでしょう?
「50km先の航空機を撃墜できる」と解釈するのは間違いではありませんが、正しいとは言えません。
飛行機というものは空中で停止できません。ハリアーだってホバリングできるのは低空だけです。当たり前ですがミサイルが50Km飛翔したとしても、そこには空気しか存在しません。

50Kmの距離でロックオンして発射し、目標の飛行機が秒速400mの速度で一直線で接近しているとします。この場合ミサイルが 800m飛翔すると目標の敵機(以降敵機)は400m接近していることになるので、着弾するまでのミサイル飛翔距離は50Kmの3分の2である 33Kmとなります。

逆に400Km/sで逃げている場合はどうでしょうか。同じく50Kmの距離で発射したとします。この場合、ミサイルが50Km先まで飛翔すると敵機はさ らに25Km先まで逃げています。さらにミサイルが25Km飛翔すると12.5Km先まで飛んでいて、またミサイルが12.5Km飛翔したころには 6.3Km先へ、6.3Km飛翔したころには3.1Km……この逃げる敵機を撃墜するころにはミサイルは100Kmを飛行している事になります。

このように最大射程50Kmと一言で表されているからといって「50Km先の目標が撃墜できる」とは限りません。

航空ファンを読むとミサイルの射程は50Kmと書かれているのに、J-wingsには35Kmと書かれているかもしれませんし、または航空情報には80Kmと書かれていても限りません。
倍も数字が違っていてもどの雑誌の記事も正しいデータを掲載していると言えます。
それにミサイルの射程は高度の軍事機密です。航空祭などで射程距離を聞いても絶対に教えてくれません。ですので、ミサイルの射程は「あぁ中距離ミサイルなんだな」ぐらいにしか参考にならないのです。

航空ファンにAIM-120の射程が50KmでAA-12アッダーの射程が60Kmと書いてあり、J-wingsにはAIM- 120が30Km、AA-12は50Km。航空情報にはAIM-120が70KmでAA-12が90Kmとあったとします。
どの雑誌もAA-12のほうが長い数字になっていますが、他紙と比較するとAIM-120のほうが長くなる場合があります。このことから、AIM-120 射程が30〜70KmでAA-12が50〜90であることから「AIM-120とAA-12の射程は同じぐらいからAA-12のほうが長いんだな〜。」 と、ミサイルの射程なんかはちょっとした参考程度にしか使えません。


ミサイルの射程どうこうと言うのは全くもって無意味なこと…かもしれません?

(更新日2001年12月26日)


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