露出を制するものは写真を制す。
飛行機を撮ろう!9回目は基本にもどって、露出について進めてみたいと思います。
まずは4回目の戦闘機写真の取り方のおさらいです。
露出=カメラ内部のイメージセンサーを光に晒す量を決める3つのパラメーターを思い出してください。シャッター速度、絞り、感度、の3つですね。
飛行機、こと戦闘機を撮影する場合、基本はTv(シャッター速度)優先で撮影するのが基本であることは既に書きました。Tv優先の場合、シャッター速度(および感度)を手動で設定した値に固定したまま、カメラの測光計で測定した結果に基づきソフトウェアが自動的に絞りを選択し、最適の露出を決定します。
多くの場合ソフトウェアが決定した露出は適切な値ですが、やはり所詮は機械ですから限界が有り、撮影者側が意図しないような真っ暗(露出アンダー)、もしくは真っ白(露出オーバー)な写真をはき出してしまうことがあります。
曇天時の難しい露出補正
飛行機撮影をしている上で、最も露出が狂いやすいのが雲天時です。何も考えずに撮影すると、右の写真のような露出アンダーの写真を量産してしまうことが有ります。
俗に「お通夜写真」と呼びますこれは、カメラに付随した測光計が背景の雲の白い部分を明るいと誤認してしまい、過剰に絞ってしまうことにより発生します。本来曇天時は、晴天時に比べて絶対的に光量が少ないですから、露出を増やしてやらなければならないのに、逆に減らしてしまうのです。
そこで、重要になってくるのが今回のテーマ、露出補正です。
露出補正は、カメラの測光によってはじき出された露出(EV値)に対し増加(減少)せよと指示を与えます。多くのカメラではEV値0(補正無しの基準値)を中心にプラスマイナス0.3/0.7/1.0/1.3/1.7/2.0と指示を与えることが出来ます。
+−1.0EV調整することによって、シャッター速度が2倍、F値は√2倍変化します。
(思い出してください。シャッター速度の2倍と絞り値の√2倍は等価です)
つまり、露出計による適正露出がシャッター速度1/1000秒 F値8.0であった場合、
シャッター優先(Tv):1/500秒 F値8.0
絞り値優先(Av) :1/1000秒 F値5.6
以上のような2倍の光量で撮影されることになります。通常、1.0EV調整することを1段あげる(下げる)と言います。
最初が0.3で次が0.7、その次が1.0って一見無秩序に見えますが、実際は0.333(1/3段)刻みであるため0.666を四捨五入しているだけです。
ケースバイケースですが、曇天時には0.7〜1.0EV程度プラスしてやると、適性露出になります。
絞り値: f/5.6 露出時間: 0.0008 秒 (1/1250) ISO
感度: 400 露出補正値: +1.0 EV
ほら、この通り!1段露出補正をプラスしてやって、お通夜写真とは無縁のステキなF-2が撮れました!
(右の写真がオリジナルで、左は補正無しだった場合(1段絞ったF8.0で撮影した場合)のイメージです)
なお「露出補正の操作の仕方が分かりません(><)」という方はマニュアルを熟読しましょう(笑)。
一眼レフだろうとコンパクトだろうと、ヘタすりゃ携帯のカメラでも、とっさに切り替えられるよう簡単に調整できる設計になってるはずです。
曇り以外でも露出は狂う
露出は狂うなんて書くと、とてつもなくいやらしい響きがしますが、残念なことに露出計は様々なシーンで誤った値をはき出します。
例えばブルーインパルスは狂いやすい被写体です。
彼らの曳くスモークが雲と同じように露出計をアンダー気味に押さえてしまいます。
絞り値: f/8.0 露出時間: 0.0013 秒 (1/800) ISO
感度: 100 露出補正値: +0.7 EV
ソロ機動時はあまり気にする必要はありませんが、6機ジョインアップした際は1/3〜2/3程度キモチ補正すると良いでしょう。
ただ、注意しなくてはならないのはレンズの最大F値以上に明るくはならないということ。当たり前のことですが、熱中してると「これ以上F値を明るくできないよ。」という注意の点滅表示に気が付かない場合があります(私だけ?)。シャッター速度を少し下げるか、感度を上げましょう。
(シャッター速度2倍=F値√2倍(1.41倍)=感度2倍 これは覚えとこ!)
もっとも、スモークに露出が適合したやや露出アンダー気味でも、それはそれで味のある写真が撮れることもあるので、その辺はあなたのセンス次第です。
逆光の飛行機は露出が狂いやすい被写体です。
絞り値: f/6.3 露出時間: 0.0010 秒 (1/1000) ISO
感度: 400 露出補正値: +1.0 EV
逆光時はどうしても太陽という光源に近い方向にカメラを構えるため、どうしても露出がアンダー気味に移ります。また、被写体たる飛行機は「陰」ですから、真っ暗になってしまいます。逆光時は状況に応じて1段程度の補正を加えましょう。
白い飛行機は露出が狂いやすい被写体です。
絞り値: f/13.0 露出時間: 0.0005 秒 (1/2000) ISO
感度: 400 露出補正値: +0.7 EV(レタッチして実質+1.0相当)
雲やスモークの白ですら反応するのですから、当然白い機体も露出がアンダー気味になってしまうことがあります。露出補正をプラスしてやりましょう。白い機体が多い旅客機は要注意です。
黒い飛行機は露出が狂いやすい被写体です。
絞り値: f/7.1 露出時間: 0.0013 秒 (1/800) ISO
感度: 100 露出補正値: なし(レタッチして実質-0.6EV)
じゃあ、黒い被写体は逆にオーバー気味になってしまうのか? 答えはYESです。
今度は逆にキモチ露出補正をマイナスしましょう。
なお、いずれの場合にも言えますが、補正を強く掛けすぎるとかえって露出オーバー(アンダー)になってしまうことも有りますから注意してください。
べっつに暗くたって良いじゃない。
露出アンダーだって、良い写真は生まれるんだぜ? 「雰囲気」を出すために露出をあえて弄るという手も有ります。写真に「テクニック」は有っても「絶対にこうしなくてはならない」という決まり事はありません。
「良い写真、悪い写真」は、フォトコンテストに出すのでもない限り、
決めるのはあなた自身です! m9(・∀・)ビシッ!!
最後に、露出補正は常にチェックしましょう。プラスに掛けたまま忘れてて、地上の被写体を撮って回ってたら、気が付いたら真っ白の写真を量産してた!(しかも海外で!)という、ハットトリック級のバカを私は知っています。
なんかその馬鹿は自分のマヌケを棚に上げて、飛行機を撮ろう!とかいうコラムを書いてるらしいです。
(ノ∀`)あー
(更新日:2010年7月8日)
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