第44回:現代の航空戦 最強戦闘機の条件(番外)

AMSTE

以前、現代の航空戦・最強戦闘機の条件という題目について3篇にわたって取り上げました。
今回はその番外編として「現代の戦闘機に求められるモノ」についてです。

戦闘機という航空機が誕生して以来、各国は航空優勢を確保するため、常に大量の投資を行い、より強い戦闘機を求め続けられ、新型は翌日には旧式化するとも 言えるとてつもないペースで開発生産が行われてきました。推進力がレシプロからジェットへと移り変わった初期の冷戦時代においてもその勢いはとどまること を知らず、戦闘機は常に強く強く進化しつづけました。

しかし戦闘機が音速を超え速度の限界点に達した1950年代以降、それまで徐々に、そして確実に高騰してきた開発費は、もはや一国の一メーカーでは賄いきれない水準にまで到達し、各国の多くのメーカーが戦闘機開発からの撤退を余儀なくされました。
もちろん買い手である国と軍隊も、軍事予算に対する戦闘機コストの割合が増大したことにより「強い戦闘機」を配備することは出来なく(もしくは相応な数を 揃える)なりました。もしコストが度外視(外交関係も)できるなら、どの国もF-15かより最新のF-22を選んでおけば問題ないでしょう。グリペンや F-16など選考する価値もありません。

さらに軍事革命とミサイルの発達により大きく航空戦の様相が変貌した結果、戦闘機の戦闘力はアヴィオニクスとミサイルの性能のみに依存するようになり、 1970年代設計の戦闘機であろうと最新のアヴィオニクスとミサイルを搭載すれば、より新しい戦闘機と同等、もしくは以上の性能を持つことが可能となりま した。
どの戦闘機であれ航続距離やペイロード、V/STOLなど物理的な性能は除き殆ど「大差の無い」状況になりつつあります。いえ正確には既にそのようになっています。

そんな横一線の状況の中、無理して高額かつ維持費のかかる「最強の戦闘機」を運用する価値はあるのか?
この答えは各国の事情によって異なれど、自他共に認める世界最強の軍隊アメリカでさえ1970年代から近未来にかけて高額なF-15の配備数は削減され代わりに安価なF-16を、更にはF-22の配備数大幅削減された事からも分かります。


冷戦が終結して国家間の全面戦争も少なくなった現代、「最も戦闘機に求められる性能」は高度なアヴィオニクスでもステルス性でも、ましてや機動性などでもなくなりました。

最も戦闘機に求められるモノ…それは"costperformance"です。

  コストパフォーマンス【cost performance】
  1.費用に対する効果の事。
  2.値段に対しての作業能率が上がっているかの目安。

(更新日:2004年1月21日)


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