「F-16コンダー」
コンダーってなんだ、コンダーって。
とある店で1980年版の軍用機年鑑のようなものを購入しました。通常○○年版と書かれた書籍はその前年に出版されているでしょうから23年も前の書籍です。
冷戦中、僕が生まれる以前の本には、各種戦闘機がどのような評価を受けているのかに興味津々でした。
表紙はA-10A真正面。なんとも渋いじゃありませんか。
裏表紙はF-15の後部座席の右側から前のコックピットを覗くような写真が掲載されており、
「圧倒的な敵勢力と、対等に渡り合える唯一の戦闘機。」
「F-15 EAGLE The world's best fighter 」
「MACDONNEL DOUGLAS」
1979年と言うと、要撃戦闘機の主力はF-104J/F-4EJで、採用決定こそされたものの、いまだF-15Jは配備されていないので、明らかにこれは売り込み広告でしょう。で、一般向けの雑誌に広告載せて誰が買うのかな?(笑)
FXで揺れる韓国なんかの雑誌ではきっと
「百戦百勝無敗。名実ともに最強を誇られる唯一の戦闘機。」
「F-15K STRIKE EAGLE The world's best strike
fighter」
「BOEING」
…みたいな表紙があるに違いない。
で、肝心な中身はと言うと、一通りの説明と、代表的なスペックが載っており、やはり有名な戦闘機ほどページを多く割かれて開設されていました。
まず、一番最初に目を引いたのはF-16の記事。
もう、名前からしてアヤシイ。「F-16コンダー」。
コンダーってなんだよ、コンダーって!(笑)
通常、飛行機に複数のニックネームがついていることはまれではありません。SR-71ハブ、A-10ワートホッグ、EF-111エレクトリックバーグとか。
しかし、本文中に「ファイティングファルコン」の名前は一箇所たりとも無い。で、調べてみると「ファイティングファルコン」の名称が正式に与えられたのは、80年7月20日とのこと。それまではコンダーって言われてたんですかね。
ちなみにコンダー「Condor」を辞書で引いてみると、「コンドル」のことらしい。
F-16初の実戦参加であるオシラク原発襲撃も後の出来事であるから、F-16の記事はもっぱら開発中の話が占めていました。
F-14やF-15については、すでに実戦経験があり「素性も明らか」になっているため、書いてあることは現在の同種の本と比べて大きな差は有りません。一つ言えることは20年前も現在も第一線級の戦闘機だということです。
んで、もう一つ注目すべきはF/A-18ホーネットの記事。
当時F/A-18という機種は存在していなかったため、機種名には「F-18/A-18」とあります。記事にも「F-18/A-18は同じ機体で違いは無
い。F-18は空対空ミッションを行い、A-18は空対地ミッションを行う。」となっており、知識として知っている「F/A」という特殊な記号が生まれた
理由を、実感として知ることができました。
F-18/A-18については「ホーネット」と言う名前が既についていおりました。
鉄のカーテンの向こう側。80年代にもなると冷戦の緊張度は徐々に緩和されてきていますが、それでもソ連は得たいの知れない不気味な大国でありました。当
然、軍事の最高機密である戦闘機についてはほとんど知られていませんでした。なので、載っている事も怪しさバツグンでございます。
まずは「Su-25? ラームJ」。「?」と付いているぐらいですから、名前すらハッキリしていないのでしょう。しかしA-10と同様の対戦車用の航空支援機とあるので、間違い無くSu-25フロッグフットの事と思われます。
しかし、そこにあるSu-25?イラストは…今知られているSu-25とは思いっきりかけ離れていて、A-10のように双発エンジンを背中にしょっています。
このイラストを描いた方はA-10と同じ性格の機体であるから、あえて似たようにしたのでしょうが、残念でしたねぇ。
それと、ソ連の最新型戦闘機の研究機の情報も載っていました。
スホーイ設計局が担当していると思われるコードネームラームL。
ミコヤン設計居が担当していると思われるコードネームラームK。
スホーイはF/A-18を意識した軽量級であり、一方ミコヤンの新型ミグはF-14やF-15に対抗する大型戦闘機(しかも可変翼!)だと説明には有ります。この説明が正しいかどうかは、既に知られている通りです。
ラームLは後のフランカーと呼ばれる戦闘機に発展し、ラームKは後のフルクラムとなりました。
そして欧州戦闘機で、面白いのは“西"ドイツのTKF90という聞きなれない戦闘機。F-4Eに代替する1990年代から就役を目標としたドルニエ社による新型戦闘機。
「はて、1990年代のドイツで新型戦闘機が就役したっけか?」
などとは思いませんでした。作案イラストが2種類載っていましたが、うち一つはタイフーンに瓜二つだったからです。説明にもイギリス、ドイツ、そしてフランス(!)の共同開発になると書いてあります。
日本機はFSXのXの文字もありません。なにせF-1の量産が行われている時代。「今後13機のF-1が生産される予定」とかかれていました。PS-1、P-2J、P-3Cも現在の半分以下45機が配備されているとあります。
パラパラっと見渡してみると、やはり現在の同種の軍用機年鑑みたいなものに乗っていないような機体が多いのですが4分の3は今のものと同じメンツが揃っています。
20年後…2020年ごろ、21世紀初頭の軍用機年鑑をどういう風に感じながら読むのでしょうか…、とは言うものの9割は同じ戦闘機なんだろうなぁ。
(更新日:2001年2月4日)
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