ロイヤルインターナショナルエアタトゥー RIAT 2008年夏
世界一の軍用機エアショーRIAT……。2006年にそれを体験し、このようなすんばらしいエアショーが有ったのかー。と、驚き、そしてフェアフォードへの再来を誓いました。
そして2008年…。英国空軍90周年の今年はRIAT近年まれに見る当たり年として、例年より更に充実したプログラムが組まれ、何より世界各国からアエロバティックチームが集結するという、アクロチーム好きの私にはまさに逃す事のできぬ内容になりました。
…いえ、正確には『なるはず』でした。
エアショーの数日前から降り続いた雨により駐車場をはじめ、会場は泥沼化。
RIATの歴史の中で史上初のエアショーキャンセルという、笑えぬ結果がまっていました。
エアショーを趣味として海外に出ている以上、絶対いつかは遭遇するであろう最悪の事態に直面してしまったのです。
よって、ここで掲載する写真は金曜日の予行と、月曜日のフライアウトのみとなります。
そのへんの経緯とフライインはフェアフォードの悲劇に譲ります。
哀しすぎる。ああ、僕のバルカンは、ラファールは、レッドアローズは…(つд`)
今回、私はFRIATマッハ2、30,000円のフォトグラファーチケットを購入しましたが、開催不能により帰国後に26,000円あまりが返金されました。本懐果たせぬ中、僅かな慰めとなりました。4000円で二日間楽しめたのなら安いものです(旅費を考えると痛いですけど)。
しかし、なんと帰国後に交通違反(スピードオーバー?)の罰金14,000円をレンタカー屋に請求されました(爆)
18の時に免許を取得して以来10年間、唯一右折禁止違反で7000円しか取られたことが無かったのに、まさか英国でそんなオチがあろうとは!
皆さん、英国でドライブするときは注意しましょう…。あの国の道路はスピードカメラだらけです…。
会場に到着後、一番に予行を行ったのはカナダのCF-118(F/A-18)。ステキな離陸を見せてくれました。
カナダのデモチームは本来予定していたケベックで見る予定でしたが、こちらで見れて良かった。
カナダのCF-118は塗装センスが良い事で広く知られていますが、2008年のNORAD50周年記念特別塗装もステキです。
機動も悪くありません(でもスイスのほうが良かったかなあ)。
F/A-18系はF-15,16よりエアショーでの機動飛行がとても見栄えしますね。
ベイパーの出やすさもこの機の特徴でしょう。キャノピーの頂点からもうっすらと。
イタリア空軍のトーネードIDS。トーネード25周年だそうです。154度…?何が(^^;
あーこれ2年前展示したブラックシーホークスのファルコンかな。戦闘機のようなオーバーヘッドアプローチでした。
後ろからユーロファイターが襲ってきました。何で後ろから。おかげで逆光です。
いい天気じゃん。なんで雨降って中止よ?とか思うでしょ?
インド空軍のアエロバティックチーム『サラン』の予行展示が始まりました。
このチームの展示は別個特集していますので、そちらを御覧ください。
http://www.masdf.com/aerobatics/sarang/photo.shtml
ちょっとフライトプログラムに空きが有ったので地上展示を見て回ることにしました。
会場にイギリスの国歌『ゴッドセイブザクイーン
- 神よ女王を護りたまえ』が響き渡りました。周りの人たちは足を止めて大型モニターを注視しています。おや、このおばあちゃんは…女王陛下じゃないですか。
なんか飛行機を見て回れる空気ではなかったので、国歌演奏中は足を止めてモニターのほうを見てました(^^;
JAS39Cグリペン。なんか向こうの空がヤバイ雰囲気…。このときに避難していればよかった。この後突然あたりは真っ暗になり、強風と豪雨に見舞わる事になります。しかも降り始めたその時は、ちょうど周りには雨宿りなんてするところの無い広いエプロンのど真ん中におり、途方にくれてしまいました。
折り畳み傘を携帯していましたが、そんなものは横殴りの雨の中では何の意味を持ちません。ともかくカメラだけは守らなくてはならないと、カメラバッグを傘で包み込むようにして保護しました。
運の悪い事に一番近い雨宿りができそうなテントは風上側で、傘を半開きにしたまま強風強雨に抵抗し、一歩一歩前進してようやく雨宿りする事ができましたが、その時既にシャワーを浴びたように全身ずぶ濡れ。ほんと酷い目に遭いました。
『バケツの水をひっくり返したよう』ほんとそんな形容が似合う、とんでもない土砂降りでした。一体何十ミリ降ったんでしょう…。
と思ったら、降り始めからわずか20分で嘘のように雨は上がり、一部晴れ間も見えるようになりました。
ハンター練習機型。
朝のBBCの天気予報で「Sunny and Shower」と言っていた理由がよく分かりました。なんという気まぐれ天気!
Before → After (ノ∀`)
今回の旅行では全日程を通して、あまり良い天気とはいえませんでしたが、一日ずっと降っている日は全く有りませんでした。
英国で「雨」というのは、通り雨の事であって我々日本人が想像する一日丸々降りつづけるような天気ではないようです。
人相の悪いトーネードGR4「スカッドハンター」。これ攻撃/偵察型ですね。
湾岸戦争の夜間スカッド狩りにおいて、トーネードは単独で精密爆撃を行わず、バッカニアがレーザー指示した標的に対して誘導爆弾を投下しました。本機はレーザー照射を行うTIALDポッドを搭載していますが、これは湾岸戦争後に装備されたものです。
2005年に就役したばかりの新型ミリ波アクティブレーダー誘導対戦車ミサイルMBDAブリムストーンを搭載。
原型がヘルファイアなので、戦闘機搭載のミサイルにしてはあまりに小さく感じました。
空中給油装置を展開。さっきまで土砂降りだったとは思えないほどいい天気でしょう?
ちなみに湾岸戦争当時、トーネードは精密誘導爆弾を投下できる貴重な戦闘機の一つでした。ハリアー、F-16、F/A-18などはもっぱら昼間の無誘導爆弾投下に従事し「砂塵が舞うだけで無駄だから飛ばすな」とか言われてました。
でも、やっぱトーネードといえば1月17日開戦初夜のJP233によるOCAストライクミッションですよね。
F-22が居ました。遠すぎ。
さて、ここで再び飛行展示に戻ります。地上展示の続きは土日のフライト前か後に回りましょう。と思っていたのですが、開催されなかったのは前述の通りです。(ノ∀`)アー
水しぶきを上げてランカスターが離陸しました。何か始まるのかな!?と思ったら次のフライトのための準備のようです。
■RAF90周年記念フライペースト
ここからは金曜日のメインイベント英国空軍90周年記念の観閲式の様子をお伝えします。
RAFの大編隊が女王陛下の観閲を受けます。遥かかなたまで続く大大大大大編隊が前方から飛来してきました。
順番に紹介しましょう。
チヌークを先頭に、マーリン×2、ピューマ×2
次ぎにリンクス×2 ガゼル×2
スリングズビーT-67 M260ファイアフライ×4
民間委託の練習機。
ランカスター スピットファイアPR19 ハリケーンMk2
おなじみBoBメモリアルフライトが続きます。
続いてハーキュリーズC3輸送機を先頭に ビーチキングエア200練習機×2 BAe125連絡機×2
おお!9機来た!レッドアローズ!?と思ったのですが、ツカノ練習機×9。
更にホーク×5
大型機が来ました。VC-10とセントリー。
空中給油をしているようで、実はつながってない(^^;
まだだ。まだ終わらんよ!
先頭はセンチネルR1。見て分かるようにJ-STARSの縮小版。そして再びBAe125×2
ニムロッドとホーク×2
しかし曇ってて本当冴えない写真ばかりです。
エアバスA310MRTT (マルチロールトランスポートタンカー) ホーク×2
グローブマスターIII
タイフーンF2×9 来た!戦闘機来た!
編隊の形がユーロファイターになってます。面白い(´∀`)
ハリアーGR7×4
トーネードF3×9
ADVです。これはすげー…
トーネードGR4×9
IDSです。『これでもか!』と言わんばかりのトーネード祭り。
最後に真打きたあああああああ!
レッドアローズがスモークを引きながらフライペーストの幕を閉じます。
息をつく暇もなく次々とあらわれる編隊に会場拍手大喝采でした。
ちょっと数えてみましょう。…合計81機!
タイフーン×9
トーネード×18
ハリアー×4
ホーク×20
グローブマスターIII .
ニムロッド
セントリー
VC-10
A310
ツカノ×9ファイアフライ×4
スピットファイア
ハリケーン
ランカスター
チヌーク
マーリン×2
ガゼル×2
リンクス×2
ピューマ×2
さすが女王陛下の空軍…。2005年に招待され訪れた、航空観閲式とは桁が違いすぎる…。
う〜ん、でも小泉と女王陛下じゃそりゃ差もつくわなあ(^^;
■グレートウォー ディスプレイチーム
(写真提供:ゆりあんさん)
またなんか凄いのいっぱい来た!(n‘∀‘)η
連合国と同盟国(と言うかドイツ)による90年前のドッグファイトが再び始まります!
どれにカメラを向ければいいの!?(今回の旅行はこんなのばかりだ)
今まで何度か戦闘機の模擬ドッグファイトを見たことが有りますが、こんな大規模なものは初めてです。第一次世界大戦時、英独仏はそれぞれ数万の飛行機を生産し、塹壕を挟んだ狭い空域に投入したため、西部戦線の飛行機密集度は凄いものがあったようです。第一次世界大戦の空中戦ものの映画を見ると凄い数が乱舞しています。それを彷彿とさせられますね。
では、登場機を順に紹介しましょう。以下の戦闘機はハンドメイドのレプリカ機です。
フォッカー Dr1といえばリヒトフォーヘンでしょうに。なんで赤く塗らないんでしょ。
あ、後でヤラレ役にするからか。失敬失敬。ここイギリスでしたね(ノ▽`)
ユンカース CL1 本機は複座の攻撃機で、戦闘機では有りません。
単葉全金属製と近代的なフォルムなのですが勿論ヤラレ役。
本物は波板外板のいかにもユンカース的な形状なのですが、レプリカ故どうみても布張りです。
ロイヤルエアクラフトファクトリーSE5a
プロペラ同調装置付き7.7mmビッカース機関銃と主翼上にルイス機関銃を装備。
ソッピースパップ。ビッカース機関銃一門のみ。中期の戦闘機。
名機キャメルの原型機です。
ニューポール17 初期〜中期。
翼の上のルイス機関銃と同調装置付きホッチキス機関銃を装備。
SE5aがCL1を捕捉しようとしています。
単葉片持ち翼のCL1の方が近代的に見えますが、SE5aの敵では有りません。
その性能差は歴然、あっという間にCL1は背後を取られてしまいました。
ガナー(ダミー人形)が必死の反撃を試みますが、哀れSE5aの射撃を食らい煙を引いています。いい。すごく。とても(*´д`)
と思ったらフォッカーDr1 vs ニューポール17のドッグファイトも始まっていました。
全て入り乱れて酷い状態です!
パイロット同士が睨み合う白熱の空中戦!シザーズで相手のオーバーシュートを狙います。これは凄い。
どうやらニューポールのパイロットが一枚上手だったようですね。射撃位置に遷移しつつあります。
Flyboysという第一次世界大戦の空中戦を主題とした映画をご存知でしょうか。
ニューポールVSフォッカーDr.Iのドッグファイトが展開されます。
アスペクト比がおかしいですが、ようつべにそのシーンが有りました。
序盤はニューポールによるゴータ爆撃機への攻撃、後半がフォッカーとのドッグファイトです。
動画4分〜にある、ビッカース機関銃(何故ビッカースを一門?)をガンガン叩いているうちに背後を取られるも、騎士道精神から見逃したというシーンですが、これはフランスのエース、ジョルジョ・ギンヌメールとドイツのエース、エルンスト・ウーデットとの一騎打ちの実話をモデルに作られています(攻守が逆ですが)。 →航空軍事用語辞典(リンク先の記事書いたのは私)
このシーンは何度見ても飽きません。カッコイイですね(´∀`*)
結局フォッカーDr.Iは撃墜されてしまいました。げほげほ…スモーク発生装置の位置が酷い。
英軍のトップエース ウィリアム・"ビリー"・ビショップの「弾丸は上半身に撃ち込め。さすれば人間はたいてい死ぬ」…という言葉に有るように、防弾装備は無く外気に剥き出しで搭乗しなくてはならない当時の戦闘機にとって、最も弱い『部品』はパイロットそのものでした。実際に飛行している姿を見てみると、それがよく分かります。
■バトル・オブ・ブリテン メモリアルフライト
グレートウォーディスプレイチームが去った後、すぐにバトルオブブリテンメモリアルフライトチームが進入してまいりました。
1910年代から40年代へと一気に四半世紀ジャンプします。
2年前とは塗装が違いますが、同じ機体のようです。いいなー!いいなー!戦勝国いいなー!(またそれか)
キョキョっと音を立てて何度か跳ね上がります。尾輪式の着陸は本当に難しそうです。
お疲れ様でしたー。
そして時は動き出す…。20世紀の二つの大戦争を乗り越え、現代に戻ってまいりました。
冷戦期がすっぽり抜け落ちてるのが哀しいところ。南アのライトニングでも…ねえ。
ユーロファイターなんて何時までたっても配備が始まらないダメ戦闘機計画の代名詞(今はF-35?)だったのに、
こうして数多くの機を見ると時代を感じてしまいます。…なんて書いてみましたが、私が戦闘機に興味を持ってからまだ10年も経ってないんですけどね(^^;
そして90周年式典の最後はレッドアローズが〆ます。後方から突如として飛来してきました。
やっぱヨーロピアンスタイル最高ですなあ。
ベスだああああヾ(*゜∀゜)ノ
エリザベス2世女王陛下の登場でFRIAT席が急にあわただしくなりました。
すげー本物だ。天皇陛下すらまだ見たこと無いのに(笑)
周りの人たちはみんなバズーカを女王陛下に向けています。え?私も?
不敬な私たちに手を振ってくれました。既に80代のご高齢ながら元気に公務をこなし、年齢を感じさせません。
RAF100周年式典でも女王陛下の元気なお姿を見られるといいなあ。
God save the queen.
90周年式典を終え、お召しヘリコプターのシコルスキーS76にのりフェアフォードを後にします。
(写真提供:ゆりあんさん)
到着したミラージュF1とF-16。
あー酷い雨(゜∀。) 私はこのときFRIAT会員専用のテントに下がって雨宿りしていました。
土砂降り>雨上がる>土砂降り>雨上がる>土砂降り…この日は一日この繰り返しでした。
雨雲の間隙を突き果敢に飛び上がったのはベルギー空軍F-16デモンストレーションチーム。
凄い水しぶきです。雨でも良い事が有るんですね。
寒くて、正直F-16なんてどうでも良かった。はやくホテルに帰りえってシャワー浴びたい。としか覚えてません(汗)
ベルギー空軍のF-16のチームも楽しみにしてたイベントの一つだったんですけどね…。
寒い、寒い、寒い…。7月中旬だというのに、ハァーと息を吐くと白くなるイギリスの恐ろしさ。
2年前は90年に一度の熱波にうなだれていたとは、とても思えません。
まだこの時点でPM3時。20時近くまでフライトは有ったのですが、もはや体力は限界でした。明日明後日の本番で楽しめば良いじゃないか。とホテルに帰って早めに休む事にしました。
その目論見が外れてしまったのはページの冒頭に書いたとおりです…。
月曜日のフライアウトへ続きます。