ヨービルトン イギリス海軍航空隊博物館 Fleet
Air Arm Museum 2013年
第二次世界大戦以前においてまともな海軍航空隊を保有していたのは日本、アメリカ、そしてイギリスの三カ国だけでした。そのうち日本は敗戦によって総てを失いましたから、いまや海軍航空の歴史を体系的に学ぶことのできる博物館は、米英だけにしか存在しなくなってしまいました。
そして第一次世界大戦前から100年以上の歴史と伝統を誇るイギリス海軍航空隊の歴代使用機や歴史について知ることができる世界屈指の航空博物館が、このイギリス海軍航空隊博物館「フリートエアアームミュージアム」です。
すんばらしいイギリス海軍機の数々を楽しむにはこれほどうってつけの博物館はほかに存在しません。イギリスと言えばロンドン空軍博物館やコスフォード空軍博物館が有名ですが、こちらも見逃すことができない博物館であると言えましょう。
私が訪れた際の展示機はこんなかんじ。
■行き方
南イングランドのヨービルトン海軍航空基地に併設されています。自動車を使用した場合ロンドンからひたすらM3を西に向かって走り、途中でA303に乗って再び西にひたすら走ります。そしてB3151にぶつかったら左折してすぐです。ヒースロー空港からの所要時間は概ね2時間です。今回レンタカーで訪れたため、公共交通機関での行き方は分かりません。
ロンドンとの間、A303沿いには世界遺産のストーンヘンジがあります。
走行中に偶然発見しまして帰りに博物館と一緒に見学しました。風景を楽しみながら走っていればきっと気がつくと思います。
近くで見るとかなり大きいです。「ストーンヘンジなんぞケリで一発だろwww」とか思ってましたが「あ、これは無理だ」と悟りました。伊達に数千年間ケリに耐えてない。
入り口。空母「アークロイヤル」(左)と空母「イーグル」(右)の錨が目印。すぐ分かる。
レンタカー屋で借りたクルマ。へへ。ベンツだぜいいだろ。(ヨーロッパじゃ大衆車のBクラスを自慢する男の人って…)
ヨービルトン航空基地。現役のリンクスが配備されてます。年に1度エアショーやっているようなので、それにあわせて渡英するのもいいのではないかと。
ちなみに私はロイヤル・インターナショナル・エアタトゥーと同時に行きましたが、スウィンドンからはおよそ1時間半ちょっとです。
外にも展示があるのですが、こっちは近く迄寄れませんでした。
博物館に併設されたレストラン「ソードフィッシュ」 名前のセンスいいな!
但し品揃えはイギリスなんでお察し(・∀・;)
http://www.fleetairarm.com/
入場料:14.5ポンド...高い
■屋内展示 ホール1 「海軍航空100年」
ちょっと足早に紹介していきます。早速みていきましょう。
ショートS27。イギリス海軍航空隊の記念すべき第1号機だそうです。(レプリカ)
ソッピース パップ(レプリカ) 。史上初の空母フューリアスで発艦・着艦に成功した史上初の「艦上戦闘機」です。ただし実戦投入されたのはキャメルでした。
まあ二度目の着艦事故で転落して初めての死亡事故引き起こしてるんだけどね。
「前進する艦の真上でホバリングして空中でフック引っ掛けて着艦」とか無理だろ。
スーパーマリン ウォーラス水陸両用飛行艇。
BAe シーハリアーFA.2
フォークランドで圧勝したAIM-9Lと一緒に。
アグスタ 109Aアルゼンチン機ですね。
空軍博物館にはプカラもあります。アルゼンチンカワイソス
ウェストランド シーキング哨戒ヘリ
この機はフォークランド戦争時、ヨーク公爵アンドルー王子っていう人がインビンシブルに乗艦した際、作戦に従事した際のものだそうで。
ウェストランド ウェセックス HAS.3
この機体はフォークランド戦争においてサウスジョージア島フォーチュナ氷河で遭難したSASの隊員を救出した殊勲機だそうです。
先に出動した2機は氷河に激突して墜落、3機目の本機が作戦に成功したとのこと。
ウェストランド ウェセックス HU.5
エグゾセに撃沈されたシェフィールドの乗員を救出した機ですって。
ウェストランド リンクスHA.3
これもフォークランド参戦機みたい。
■屋内展示 ホール2 第二次大戦〜朝鮮戦争
第二次大戦エリアです。楽しそうな機体がいっぱいむふふ。
フェアリー フルマー複座艦上戦闘機の記念すべき試作機初号機。翼のたたみ方最高です。
地中海でイタリア海軍みたいな田舎モン(笑)ならともかく世界最強(ここ重要)の帝国海軍の勢力圏にまで出張ってきたのが運の尽き。
南雲機動部隊の零戦にボコられましたと。帝国海軍第一航空艦隊は世界一ィィィィ!!!!!
ミッドウェー?なにそれおいしいの。うちのシマじゃアメリカ帝国主義はノーカンだから。
フェアリー ソードフィッシュII雷撃機
飛行機は多少のスペックよりも信頼性が重要。後継機を差し置いてヨボヨボでもWW2で活躍した傑作雷撃機ですね。
この機体は実際に大西洋で任務に投入されていたものだそう。
ブラックバーン スクアII戦闘爆撃機
湖に沈んでたものを引き上げた唯一のスクア現存機です。
グラマン マートレットI
マートレットの唯一の現存機だそうです。米海軍でいうところのF4F-4ですね。ろくな艦上戦闘機が無かったのでアメリカから貰いましたと。
ヴォート / グッドイヤー コルセア
アメリカでいうところのFG-1A です。
うーん、カッコイイ。
グラマン ヘルキャットII (F6F-5)
アメリカ海軍機なんて使うことになったのはおもにイギリス空軍のせい。空軍がリソース全部もっていくから艦上戦闘機がアレに。
グラマン / ジェネラルモータース アヴェンジャー (TBM-3E)
コイツは本当にデカイ。ありえないぐらいデカイ。
スーパーマリン シーファイア F17 荒ぶる鶴の舞!!(主翼のたたみ方的に)
…うわなにこれ小さい可愛い(><)
もうね、日米の艦上機ありえんくらいデカイ。ゼロ戦でさえデカイ。なのにシーファイア超小さくて可愛い><
フェアリー ファイアフライTT1
戦車ではない艦上戦闘爆撃機。日本本土攻撃に参加した機の塗装だそうです(この機は参加してない)。
シーフューリーFB.11 この機体は岩国基地に配備されてたみたい。
やっとまともな艦上戦闘機手に入れたよ! 朝鮮戦争ではMiG-15も撃墜したし最強レシプロ戦闘機だよ。
シーファイア(左) シーフューリー(右)
ミグ MiG-15と見せかけてポーランド製のLim-2
地味にロールス・ロイス製ジェットエンジン搭載。
ハーバード。なんか女性が整備しちょります。
空技廠 MXY-7 桜花
なんか凄っっさまじいのキターーーーーー(゜∀゜)ーーーーーー!!
明らかに漢字を書いたことがない人が頑張って書きました。的な「神風」と間違った日本感丸出しの得体のしれないトリイ?の先には桜花が!
「カミカゼってのはモンゴルのフビライ・カーンの軍勢をぬっころした台風"ディバイン・ウインドウ"の意なんだぜ」みたいな説明が書いてありました。
こういう間違った日本観マジ好き。
これUボートの発令所だと思う。忘れた。
航空母艦のモデルがたくさん展示されてます。
よくさ「零戦をウシで引っ張った」とか馬鹿にするけども、イギリス海軍なんてコルセアをゾウで引っ張ったんだぜ?
■屋内展示 ホール3 航空母艦
ここにウェセックスがあるじゃろ? これね、面白いの。乗ると扉が閉じてガタガタ揺れだして「飛ぶ」んですよ。もちろん模擬的にですけど。
そして、扉が開くと...
なんと空母艦上に到着!!実に面白い演出でした。
ホール3は格納庫全体が航空母艦になっており、艦尾方向からは5分に1度くらいの割合でバッカニアが着艦します。(映像ですが)
これやるためか、暗い。マジ暗い。三脚がなかったので酷い目にあいました。
逆に艦首方向では同じく5分に一度くらいの割合でファントムFG.1がロールス・ロイス「スペイ」のリヒートを焚いて(ノズルが光る)カタパルトで打ち出されます!
この機体はアメリカ、セントルイス生まれのYF-4K。試作型ですね。
ホーカー・シドレー バッカニアS.1(左) 攻撃機
英海軍のジェット艦上戦闘機はアレな機体ばっかだけど、こいつだけはガチ。(攻撃機ですけど)
バッカニアS2B(右) 攻撃機
バッカニアは上の初期型と後期型の2機が展示されてます。下の方は対艦ミサイルの搭載が可能になりました。
デ・ハビランド シーバンパイア戦闘機のプロトタイプ3号機。
英海軍(というか世界で)最初のジェット艦戦。初飛行1944年ですからね、さすがイギリスはジェット先進国。
スーパーマリン アタッカーF.1 戦闘機
ドイツの息の根をとめた後は間違いなくイギリスがジェットエンジンの世界最先進国でした。
しかしもうイギリスももう死にかけてたので、優秀なエンジンを活かせる戦闘機が…その…なかったんです。
ソ連ではコイツと同じロールス・ロイス「ニーン」を積んだ後退翼のMiG-15が…アメリカではF9F-6が…
なのになんで本家は尾輪式直線翼なんだよ!ウェーン(´;ω;`)ブワッ
ホーカー シーホークFGA.6
アタッカーの後釜。まだ直線翼かよ。まあ後退翼は低速性能落ちるしね。アメリカも苦労してたしね(´・ω・`)
スーパーマリン シミターF.1 戦闘機
やったぞ!ついにイギリス発の亜音速後退翼ジェット艦上戦闘機だ! まあコイツが配備された頃にはもうアメリカではマッハ2のF4HファントムII飛んでたんですけどね(死)
シービクセンFAW.2 戦闘機
凄いぞ!イギリス海軍初の亜音速全天候型ジェット戦闘機だ! 無視界でも赤外線ミサイルで攻撃できるぞ!
まあF4HファントムIIと同世代なんですけどね(´;ω;`)ブワッ むしろファントムIIがおかしい。あいつ高性能すぎ。
なんでコイツだけたくさん掲載してるのかって? シービクセン推しだから。
フェアリー ガーネット COD.4 哨戒機。
大丈夫。言いたいことは分かる。けど三日で慣れろ。(なお私の経験上3日で美しい飛行機に飽きたことはない)
イギリスお得意の蝋人形。すまん。飛行機に時間を割きたくて早歩きしてた。
■屋内展示 コンコルドホール
いよいよ最後の格納庫。コンコルドホールです。その名の通りコンコルドがまるごと鎮座し、格納庫のヌシとなっています。
このコンコルドはプロトタイプ2号機。就役はしていません。1976年からこの博物館にいるみたいですねー。
シーハリアーFRS.1 何この展示カッコイイ。
空母「インヴィンシブル」のスキージャンプから発艦するシーンを再現したみたいです。
あら、この子ミラージュIIIキラーですって。アルゼンチンには"La Muerta Negra"と呼ばれたと書いてあるけどスペイン語なんでわかんない。
ググると死神っぽいのが出てくるので、たぶん死神の意。
ホーカー・シドレー P.1127
あら、この子ハリアーの原型機。ただ主翼は量産型ハリアーのものに交換してるみたいですね。
WikipediaだとP.1127のことをケストレルとか書いちゃってるけど、P.1127とケストレルは違うぞ。YF-16とF-2くらい違うぞ。全く別の機体だぞ。
ホーカー ハンターT8M
イギリス海軍向けの複座艦上練習機型。サイドバイサイドだけど空軍型も同じだから突っ込んではいけない。
やたらとカッコイイBAC221。
フェアリー・デルタ2(コスフォード空軍博物館にあります)を原型に、コンコルドで採用されるオージー翼の研究機に使われました。
高速性能と、低速時にめがっさ迎え角をとっての低速性能の両立。前縁から渦が発生してそれが主翼上面を流れる空気にエネルギーを与え剥離(失速)を防ぐんだ。
ちなみにコンコルドスキーことTu-144もMiG-21で同じような試験してます。
ハンドレページ HP.115
この子もコンコルドのための低速と高速飛行の両立を目指した研究機。もうどこから突っ込んでいいのか。
ブリストル スカウト
第一次大戦機はレプリカが多いんですけど、やっぱりレプリカ。
ブリストルスカウトはイギリス初の機銃同調装置搭載機…だった気がするけど忘れた。たぶんそう。きっとそう。
ウェストランド ウェセックス HU.5
ウェセックス3機目ですが、こちらは輸送型ですね。シェフィールド沈没の際に救難も行ったとあります。
さて、イギリス海軍航空隊博物館、フリートエアアームミュージアム楽しんでいただけましたでしょうか。
ウェストランド ワイバーンが見たかったんですが、この日は展示していませんでした。残念。皆さんが訪れる際にはありますよう。
なお自動車で1時間弱の場所にボービントン戦車博物館もあります。はしごも無理ではないと思います。ただ見学時間はお察しになりますから、その辺は皆さまのスケジュールと相談してください。
アメリカの「USSホーネット博物館」 「USSミッドウェイ博物館」のページもご一緒にどうぞ。