ｆｓ９８

～第８章　戦闘国家～

予定飛行時間：２時間４０分
実際飛行時間：３時間２０分(事件発生の為)
飛行時刻　　　：１２００～１４４０(現地標準時)
実際飛行時刻：１２００～１５２０(現地標準時)
飛行距離　　　：１２００海里（２２７４Ｋｍ）
巡航速度　　　：３３０ｋｔ（６３０Ｋｍ／ｈ）
燃料消費　　　：６０００ガロン（６２％）

・ブリーフィング

クウェート国際空港。今日の目標はトルコのイスタンブールだ。世界最強を誇る海軍と陸軍を誇るオスマン・イスラム大帝国の首都として数百年間栄えた歴史有る都市だ。フライトプランは以下の通り、

・フライト
久しぶりに飛び立つP-3C、いつものようにキーンというターボプロップエンジンの快音が響き渡る。今にも飛び立ちくてたまらないかのように全くの好調だ。

離陸許可がおり、離陸出力までパワーを上げ離陸する。久しぶりの離陸は気持ちが良い。いつものように23000ftまで上昇し320ktで飛行することにする。元々対潜哨戒機のP-3Cは高空を速い速度で飛ぶように設計されてはいない。海面から数100メートルを低速で長時間飛行するように設計されている。最大でエンジンを一基止めて半日間滞空していられるという対潜哨戒機として十分過ぎるほどの能力を持つ。この対空時間を買われてか早期警戒機型が造られており、少なく見積もっても今後十数年は現役だろう。

イラク、バスラ沖。ペルシア湾の最奥部
この辺りは湾岸戦争時に原油が大量に流出した場所だ、進路を北北西に取り。しばらくは例によって砂漠の上空を飛ぶ事になる。砂漠は砂漠でも場所によって異なるのがまた一興。そして数十分後バグダッド国際空港のサダムＶＯＲ(なんちゅー名前だ)320ラジアルをインターセプトする。前方に大きな都市が見えてきた。おそらくこの街がバグダッドだろう。バグダッド上空と言えばF-117ナイトホークステルス戦闘機が夜間、対空砲火を浴びながらもピンポイント爆撃を敢行し無傷で帰還したと言うイメージが強い。あの対空砲火の有名なシーン、実は上空に何の機もいなかったのだ、EF-111レイブン電子戦機が大量の妨害電波をばら撒きイラク側を触発しており、F-117が到着した時はすでに銃身が加熱しきった状態で対空砲などまともに撃てなくなっていた。

バグダッドサダムＶＯＲ上空

バグダッドを通過すると街らしき町も見えず、所々に畑らしきものがあるといった程度になってきた。そしてカザフスタン領内に入る、いつのまにか砂漠の景色から一変して山岳地帯になり、雪が積もっている。若干雲が出てきたが機より下方なので視界になんら問題は無い、景色が見えなくなってしまったが。晴れたり曇ったりが断続的に続いている、山岳地帯なので所々により天候の変化が激しいのだろう。

シリア領内、先ほどまで砂漠地帯だったのだが一変して山中に

この辺りは2000m～3000m級の山々が連なる高山地帯、3月上旬で雪が降っていても何ら不思議は無いだろう。

シリアを抜けてトルコに入る、トルコに入ってしまえばあとは西北西に向かい直接イスタンブールを目指す。このイスタンブールの歴史的な地の利だが、黒海と地中海をわける海峡の要所に位置し、イスタンブールを制する者はまさに黒海を制することができるわけで、歴史上このイスタンブールの覇権をめぐりしばしば激戦とも言える衝突が起きた。アジア⇔ヨーロッパ間のシルクロード貿易の仲立ちをし、巨大な市場が自然と出来あがるこの場所はどこの権力者にとっても非常に魅力的だったに違いない。尚、このイスタンブールを首都にするオスマンイスラム帝国が、アジアとヨーロッパの製品に莫大な税金をかけて、肉食中心のヨーロッパ人にとって大切な調味料が異様なほど値上がりし｢胡椒一粒は黄金一粒｣そんな言葉が生れるまでになってしまった。ヨーロッパ人は陸路がダメなら海路を使って・・・と当然ながら考えた。これが大航海時代の幕開けにつながる。ご存知のように、喜望峰に到達したディアスに偶然アメリカに到達したコロンブスも胡椒を求めてインドへ向かったわけだ。余談だがディアスもコロンブスもガンダムに登場している。輸送艦コロンブス、ＭＳリックディアス。航海士の名をつけるのが慣例となっているようだ。

トルコに入ると一時は晴れた空がまた曇り出した。イスタンブールに近づいたのでＡＴＩＳ気象情報を聞いてみると｢｣との情報が入った。気温が３℃、まっ昼間だと言うのにかなり寒いようだ。ＶＯＲ170ラジアルをインターセプトする為左旋回に入る、この旋回が終わればファイナルアプローチだ。機の右側には黒海が広がり、左側には地中海が広がる。

最終進入の為旋回する。背景には黒海が広がる。
風方位３３８、１７ノット。視程１０マイル、気温３度、高度規制値３０２７

ＶＯＲをインターセプトした直後、VOR1をILS周波数にセットしファイナルアプローチ状態、間もなく、日本から続いたアジアの旅に終止符が打たれる。視程は10マイルほど有るので視界は悪いとは言えないが、だがかなり悪条件の横風着陸だ、機が真っ直ぐ飛行しない、横滑りしながらの降下となる、

手前がアジア、海峡の向こうはヨーロッパ。左側に見える海は地中海。

こんな強い横風の着陸は今思えば初めてかもしれない。が、こちらとて訓練を受けたパイロット、失敗するわけにはいかない。グライドスロープをILSで確認しスロットル調整とピッチ調整で修正、目視で滑走路の直線上を維持する、浅いバンクとラダーペダルをこまめに使い分け滑走路が真っ直ぐ正面に見えるよう維持する。…そして着陸。思った以上に滑走路が短い。逆噴射を掛けて短距離で減速しタキシングロードに入る。タキシング中に気付いたのだが、今使った滑走路は小型機用ではなかったのだろうか？横幅が広かったが、滑走路がかなり短かった。停止しパーキングブレーキセット、エンジンをカットオフし駐機し、イスタンブールの観光に出かける。

寒い…クウェートは暖かったのに…

・デブリーフィング
ようやくアジアをぬけてヨーロッパに入った。ここで一段落したといえるだろう。次回のフライトは永世中立国スイスの首都ベルンに向かう事にする。あえて言おう！高速道路を使う可能性もある！！と。

ＢＡＣＫ