〜第6章 天竺を目指して〜
予定飛行時間:2時間30分
実際飛行時間:3時間30分(寄り道の為)
飛行時刻 :1200〜1430(インド標準時)
実際飛行時刻:0800〜1530(インド標準時)
飛行距離 :1050海里(2000Km)
巡航速度 :330kt(630Km/h)
燃料消費 :6000ガロン(70%)
天候 :低高度に厚い雨雲
風 :西弱風
(詳細紛失の為大まかな数値です)
カリカット〜ボンベイ国際空港
ブリーフィング
インドの代表的な大都市ボンベイへのフライト。低く分厚い雨雲がインド東部全域を覆っており、離陸直後の低空飛行時には注意が必要だ。雨の影響もあって視界も若干悪い、ボンベイの天気予報は晴天と発表されている。巡航高度23000ft付近には西から東へ針路の全く逆方向に風が吹いており、若干の遅れが予想される。航続距離には全く問題無いので、定刻到着するのならばいつもより増速するのがよいかもしれない。なお今回は我が友人が操縦桿を握り、私はインストラクターとして計器や航法機器の設定、操縦の支援を行なう。エースコンバットなどのシューティングは得意だがシミュレーターはほとんど初体験の彼、いきなりP-3C飛ばして大丈夫なのだろうか?まぁいざとなれば自分で操縦桿を握れば良いのだから気楽に行くことにしよう。
フライトプランは下記の通り
強い雨の降る中、傘をさし駆け足で搭乗機に向かう。準備はすでに整っており滑走路へ向けてタキシングを開始する。
私:「じゃぁ、ゆっくりとスロットルを上げてここにあるN1計の出力を96%まで上昇させ、140ktにまで加速したら操縦桿を引いて機首を上げてね。」
スロットルを押し倒し離陸する。
友:「おおエンジンパワーが100%超えてる!プロペラ機なのにアフターバーナー!」
私:「あの〜、オーバーヒートしてるんですけど…」
最初から見事にエンジンがオーバーヒート。96%に設定しろと言ったのに…スロットルレバーを最大限まで倒していたな。まぁ僕も当初は最大限界出力出していたし目をつぶることにした。140ktに近づいて操縦桿を引く。以外と美しい離陸ができた。
私がスロットルをN1の88%に設定する。さすがにタービンエンジンの制御はイキナリやらせても無理だと実感した。ピストンエンジンのように素早く反応せずに、若干時間をおいてワンテンポ遅れて出力が変化するからだ。
私:「じゃ〜しばらくはそのままの方位を維持して2500ft/mの上昇率で飛んでてよ。」
友:「この計器を見て調整するのね?お、雲を抜けた。」
雲を抜けるとそこは見事に晴れわたる晴天で眼下に広がる雲海と非常にマッチしていた。1万ftに達し左旋回を指示。
私:「じゃぁ、機体を20度ほど傾けて方位270まで左旋回、現在の上昇率を維持しながらね。旋回すると揚力が減るから操縦桿を若干引かないと高度が落ちるからね。あ、そっちは右だろ左旋回だよ!」
いっぺんに全部言ったからか頭がパンクしたらしい、いい年こいて右と左に区別がつかなくなるとは…その後も予想通り上昇率が減少し操縦桿を引くものの、引きすぎて上昇率が今度は非常に大きくなってしまい引きを弱めるが今度は上昇率が低すぎると言う初心者ならではの初歩的ミスを何度となく繰り返していた。方位270度をとっくに過ぎ去ったと言うのに…
私:「方位270はとっくに過ぎさったんだけども…」
友:「あ、、、ホントだ。」
右に旋回し方位270をようやく維持できた…これからはしばらく直線的に上昇するだけだ。まだ離陸してから5〜10分しか経ってない。
ようやく巡航高度23000ft、高度維持のみオートパイロットを設定し負担を軽減、ヒマラヤ山脈を見てみたいのでかなり遠回りになるが若干北方向に針路をとりヒマラヤの山々に沿って飛行しようと思う。当然危険が伴うが非常に見通しが良いので衝突する事もないだろう。しばらくの間ドリームキャストでセガラリー2対戦に燃える事にした。コックピットの中にTVを持ちこみ。
トヨタセリカ・・・っておいおい SEGA(c)
そんなことしているうちに山が見えてきた。ヒマラヤ山脈だ。世界最高峰の連山、その高さにはさすがに驚きを隠せない。何せここは23000ft、高度7,000mの高空、それよりもさらに高く聳え立つこの山々、この山頂は数千数億年前は海だったと言う事実を考えると、その自然のすばらしさと雄大さ凄まじさがひしひしと伝わってくる。頂上の真上を飛びこの山々を完全に征服してみたくなってきた。スロットルを足し若干機首を上げる事を指示しヒマラヤ山脈の完全制覇に取りかかる。
まさに自然の雄大さ!!
余談になるが高校二年生のとき物理を担当していただいた先生が所属していた登山チームは、ヒマラヤの8000m級の山の頂上を目指し夏休みに旅立った。ベースキャンプより何度ものアタックの結果、最後の最後にしてようやく頂上にたどりついき、この記事は新聞にも載ることとなった。ただし最悪の結末として。
征服に成功したもののベースキャンプに戻る下山途中、テントを張り睡眠をとっていた登山チーム…雪崩に遭ってしまったのだ。直接雪崩を食らったのでなく雪崩の爆風を食らい休憩中のチーム全員が吹き飛ばされ即死したらしい。なかなか癖のあって面白い先生だった、母からこのニュースを聞かされた時は「このクソ暑いのに訳わからんこと言うな!」と追っ払ってしまった。真実だと知ったのは夏休みの終わった9月1日である。亡くなられた恩師の冥福を祈ります。
さらに余談の余談になるが、登山部の部員とたまたま友人だったのだが、部長が新聞へのインタビューにこう答えたらしい。「誰からも好かれ非常に優しく…うんぬん」で、当の本人に本音を聞いたのだが、全然そんな事思ってもいなかったらしい。(爆)有る事無い事とりあえず良い事を嘘でも言ったとのこと…不謹慎だがこれには大いに笑ってしまった。ちなみにその友人とは元祖マヤラーである。
話しを戻そう。
人間の英知の結晶である飛行機により簡単にも制覇したのだが真上から見下ろす雲海より突き出す山がまた美しい。おそらくデスクトップパイロット1000万の間でP-3Cを使用しヒマラヤ山脈を制覇したのは私達ぐらいのものだろう。数分間山沿いに飛んでいたのだが、元の経路に戻るため左旋回を指示し一路ボンベイに向かって飛んだ。
1万mもの高空!しかしほぼすぐ下まで山がそびえる
ヒマラヤ飛行時の高高度からスロットルを弱めず巡航高度に降下し、重力を利用して加速。そのままの通常時よりも数十kt速い速度で飛行する。いつもならとても長い時間に思えるのだがパートナーと共に飛行しているので大した時間にも思えなかった。ILS進入を試みるが、どうせILSの見方がわからないだろうからILSマーカーをONにして直感的に分かるように設定した。
前回の夜間着陸よりも怖かった。何せ操縦桿を握っているのは新米だから…フラップを20度に設定し速度160ktでファイナルアプローチに入る。出発地カリカットと同様空は曇り渡り視界も最悪、風無しといった状況だ。滑走路を目視で捉えILSの指示通りに降下し、小さな調整はラダーで行なうように忠告する。スロットルの調整は僕が行なう。フラップを40度設定ギアダウンし減速、もう滑走路は目前だ。マーカーの赤い枠におさまっており、初めての割にはなかなかうまい着陸進入だ。何も問題無く着陸、インドはボンベイに到着した。友の顔が着陸成功の喜びにあふれていた。
雲が低く、視界も悪い
・デブリーフィング
今回は全く操縦桿を握らずに飛行することができた。友人が遊びにきてくれたおかげで退屈な巡航が楽しい時間に変わった。ネタのマンネリ化をも救ったとも言う…次回はインド〜パキスタン〜イラン〜クウェート…だんだん危険度が増していく…
それにしてもヒラヤマ…もといヒマラヤ山脈は凄かった、山が筍のようににょきにょき生えてくるバグが有ったものの遠回りする価値が大きかった。