FS2000

～第12章　翼よ見よ、あれがニューヨークの灯だ～

（サンタマリア空港～バミューダ国際空港）
予定飛行時間：６時間３０分
実際飛行時間：５時間５０分
飛行時刻　　　：１５００～２１３０(現地標準時)
実際飛行時刻：１５００～２０５０(現地標準時)
飛行距離　　　：２０２０海里（３８２７Ｋｍ）
巡航速度　　　：３３０ｋｔ（６３０Ｋｍ／ｈ）
燃料消費　　　：５９２８ガロン（７８％）

（バミューダ国際空港～JFK国際空港）
予定飛行時間：２時間２１分
実際飛行時間：２時間２２分
飛行時刻　　　：００００～０２２１(現地標準時)
実際飛行時刻：００００～０２２２(現地標準時)
飛行距離　　　：７０３海里（１３３２Ｋｍ）
巡航速度　　　：３３０ｋｔ（６３０Ｋｍ／ｈ）
燃料消費　　　：１０３１ガロン（２１％）

・ブリーフィング
２回ぶっ続け、７時間の飛行を予定している。途中でバミューダに寄港し給油を行い、そのままアメリカへ直行の予定。
溜まった分を取り戻すつもりで気合を入れて飛行する。
フライトプランは以下のとおり

休憩を取った後、再び飛行を開始するために燃料を満タンにした。エンジンを始動し滑走路へ向かい、再び飛び立つ。雨も上がったがまばらな雲はある。機は雲の中を突っ切り青空へと飛び立った。後はまた天気の良い星空をオートパイロットで飛行するだけの作業となる。
P-3C

高度は28000ft、速度は330kt。機が先ほどの雨でぬれている。28000ftともなれば高度8000m、外気温は氷点下にまで下がっているので、翼やピトー静圧管に氷が張らないようにヒータをONにしておく。翼に氷が張ると空気の流れが歪んでしまい揚力の低下につながる。ピトー静圧管はそれに関連する計器が全て使用不可能になる(気圧高度計、対気速度計、昇降率計等)。第二給油地点までの予定はあと4時間後だ…
沈む太陽
西の空に日が沈む

この長い時間特筆すべきこともないので重複するが再度P-3Cについて書く。
英語表記ではP-3C [ORIONE] Anti Submarine Patrole Aircraftとなる、旅客機｢エレクトラ｣を改造し最大で１６時間ものあいだ滞空できる。１６時間滞空するとなると一般サラリーマンが８時間働くとするとその倍！当然交代で休憩をはさみながらでないと航空士の体力が持たない、そのためP-3Cにはベッドが備えつけられている。それでも帰還した時はヘロヘロの状態だそうだ。１６時間飛びつづけても残業手当も出ない(？)、自衛官とはキツイ職業だ。
P-3Cは間近ではじめて見た軍用機でもある。厚木基地のある綾瀬市に野暮用で出かけた時に頭上低空をフライバイしていったのだが、思わず「おぉ～～P-3C!」と叫んでしまった。連れの友人に白い目で見られる始末、地上展示されているのを見たのは厚木基地航空祭Wings'99だ。間近で見るとやはりでかかった。

後から知ったことだが、毎日同じ時間にウチの上空をボォ～ンという低い唸り声を上げて飛行する４発機はP-3Cだった。

四時間が経過しバミューダが見えてきた。ようやく給油ポイントだ、島の数十パーセントを占める空港へアプローチする、こんな辺鄙な島にP-3Cが立ち寄る事など無いだろう。フラップ角40度フルダウン、ギアダウンして着陸速度120ktを維持し降下を続ける。美しいランディングが決まりスラストリバーサーとブレーキを使い分け減速してエプロンへと向かう。これより給油を任せ、この美しい島で夜食を食べることにした。現地時間午後１０時、僅かな休憩を満喫する。

バミューダアプローチ

約二時間後、休憩を終えて出発準備にかかる、

ここで、大西洋を渡る全ルートを含めたフライトプランを載せる。

現地時間午前０時。離陸する為に滑走路へと向かう、フラップ確認、ギアレバーダウン確認、ブレーキリリース、エンジン離陸出力、排気温度正常、各警告灯異常なし、80チェック、V1、ローテート、V2、上昇確認、ギアアップ、上昇出力へ出力ダウン、フラップアップ、上昇速度250kt維持、1000ft、2000ft、テイクオフチェックリストオールコンプリート。

離陸しアメリカを目指す。

例によって23000ftまで上昇しオートパイロットに移る、後２時間でアメリカ大陸に到達する。島が見えなくなると黒一色と星空だけの景色が広がっている。自然とまぶたが重くなってくる、コックピットで寝るわけにはいかない、後二時間、眠気覚ましにコーヒーでも入れてくつろぐとする。

バミューダと言えば「バミューダトライアングル」で有名な航空機や船舶の遭難の名所。異次元説やら宇宙人誘拐説やら怪しい話も多く聞くが、実際は海底深くに存在する固形天然ガスが何かしらの理由により海底に露出し、溶け出したガスが海上に大量の泡を作り出し船舶を引きずり込むと言ったものらしい。当然そのガスは当該空域に漂い、それを航空機のエンジンが吸い込んだら……といった説が有力だとか。

しかし最高に退屈なフライト…

オートパイロットが機を降下させ始めた、前方にはようやくアメリカ大陸が見え始めた。世界最大の飛行機先進国であるアメリカ合衆国だ。休み休み飛行したものの総フライト時間８時間を経たのだ。

感動にも似た気持ちが湧いてくる。ようやく陸地らしい陸地にたどり着いた、ここはアメリカ屈指の大都市ニューヨーク。

｢翼よ見よ、あれがニューヨークの灯だ｣

などとリンドバーグのようにつぶやいてみたりもした。

ケネディ国際空港へ向けて針路を取り最終進入を試みる。

おそらくはかの有名なマンハッタン島。左後方には自由の女神が見えていた。

あと数分で長かったフライトにピリオドが打たれる。現在高度2000ft、ILSグライドスロープをインターセプトした。滑走路を目視で確認、あとはいつも通り着陸するだけだ。着陸など外を見なくとも出来る、計器飛行証明保持者にとっては造作もないこと、のこり500ft、あと１分で着陸だ。ワンハンドレット、フィフティー、フォーティー、サーティー、トゥエルブ、テン、コンタクト。着陸…安堵感からため息が漏れる、スラストリバーサーで減速しスラストアイドルにもどす。タキシングロードへ入りエプロンへとタキシングする。そして停止。パーキングブレーキセットしカットオフチェックリストへと入る。

・デブリーフィング
・・・サンタマリアまでは、前回の更新から間髪を置かずに飛び立ったのですが…サンタマリア～バミューダで、予想飛行時間を算出するとやる気が失せてしまい１年間もサボってしまいました(汗
そして意を決して先日サンタマリア～バミューダ～ニューヨークと一気に飛行したわけです。そして、ニューヨークに到達…題名は当然ながら世界初の無着陸大西洋横断で有名なリンドバーグの著書「翼よ見よ、あれがパリの灯だ」に倣ったものです。

ＢＡＣＫ