F-15C/D

単座のF-15C及び複座のF-15Dは従来のF-15A及びBを改良したイーグルである。
しかし、改良とは言ってもF-15AとCが空中戦に於いて決定的に性能差が有るという訳ではない。AとCの相違点は僅かである。
当初F-15A/BはF100エンジンのトラブルと低燃費に悩まされ、滞空性能は予想外に低くなってしまった。F-15Cはその問題を解決する事を主眼において若干の変更点が加えられた。
具体的には性能向上余地として残されていたスペースを潰し燃料タンクに当てられている。左右主翼のインテグラルタンクを前縁にまで拡張し、インテーク部に近い胴体に左右計4箇所のタンクが増設された。これにより燃料搭載量はF-15Aの6572リットルからF-15Cの7836リットルと約20%向上した。

また、燃料に関連してもう一つ重要であったことはコンフォーマルタンク(FASTパック)の搭載が可能となった事である。この胴体側部に密着させるタイプの増槽は空中投棄こそ不可能であるが通常の落下式増槽に比べ格段に抗力が少なく、むしろコンフォーマルタンクを装備することにより抗力が低減するとさえ言う向きも有る。このタンクの中には2839リットルの燃料を搭載可能で、左右あわせて5678リットルの燃料を搭載する事ができる。空中に於ける燃料の1滴は血の1滴に等しい。ミッションによっては重量増以上の恩恵を得る事ができる。


(写真はコンフォーマルタンクを装備したF-15D“グラマラスグレニス”。前席に乗るのはX-1で初めて音速を超えた男、チャックイェーガーである。)

しかし、空中投棄が不可能なコンフォーマルタンクの装備は航空優勢を確保する任務では万が一のドッグファイトで不利になりうる。コンフォーマルタンクを装備しなくともF-15Cには十分な燃料を機内に搭載でき、必要であるならば610ガロン(2309リットル)外部増槽を3本装備可能なため、あまり使われる事は無い。
なお、機内燃料、増槽×3、コンフォーマルタンクを装備することにより20441リットルの燃料を搭載可能。

写真は米国に接近したTu-95ベアSIGINT機を監視する海軍のF-4。帰還のためコンフォーマルタンクを装備したF-15Cに任務を引き継ぐ様子。このようにコンフォーマルタンクを装備した機が「実戦」に投入される事もしばしばあった。
F-15C/Dが装備するコンフォーマルタンクにはF-15Eストライクイーグルのような対地攻撃用のハードポイントはもっていない。
三菱重工がライセンス生産したF-15J/DJは機体的にF-15C/Dに準じており、コンフォーマルタンクの装備も可能である。最も航空自衛隊がコンフォーマルタンクを保有していないため装備される事は有り得ないだろう。

燃料増以外にはPSP対応した改良型のAN/APG-63レーダーの装備するなど、F-15Aに対し施された改良を標準で装備している事があげられるが、単純にF-15AやF-15Cとひとくくりにしてもそれぞれのバリエーションの中で装備するエンジンやアビオニクスは異なっているため、AIM-120を発射可能なF-15Aもあれば、不可能なF-15Cもあり一概に言う事はできない。
よって、全体から見たF-15AとF-15Cの違いは燃料タンクの差であると言える。
F-15CとD違いは前者が単座であり、後者が複座の練習機である事で、F-15Dでは後部座席を設けるために戦術電子戦システム(TEWS)を撤去しているため電子戦能力に劣る。F-15AとBの差異も同様である。
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(単座機コックピット後部アビオニクス室。性能向上余地の大きさにも注目。)

F-15Aの生産は77年で終了し1978年よりF-15Cの生産が開始され、1979年に最初のF-15C飛行隊が嘉手納基地18TFW 67FS“SHOGUNS”で実働体制についた。

(シリアルナンバー78-0472 F-15Cの5号機 MSIP適用済)
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(シリアルナンバー76-0093 F-15A MSIP適用済 F-15AながらAMRAAMを装備している)

1985年よりF-15に対し多段階改良プログラム(MSIP Multi-Stage Improvement Program)が順次適用されている。
MSIPとは、急激な進化を遂げる電子工学の分野に対し、F-15の旧式化したアビオニクスを排除し、新型の機器に換装する計画である。1985年よりF-15A/B及びF-15C/Dを対象に行われた。F-15Aに対してはMSIP1 F-15Cに対してはMSIP2と、若干内容が異なるがほぼ同等の近代化改修が施されている。
ここでいうMSIPとはF-15A/B/C/Dに対する改修であり、航空自衛隊F-15J/DJに対するJ-MSIPとはやや異なる。

主な改修点は以下の通り。
この中でもAN/APG-70レーダーへの換装は最重要であり、AN/APG-63はメモリー不足により新たな脅威に対抗する事が難しくなっていた。AIM-120AMRAAM発射能力の付与も重要な点である。が、1991年湾岸戦争ではミサイルの配備の遅れから実戦で発射される事はなかった。1985年以降生産機についてはあらかじめMSIP改修機同等のアビオニクスを搭載している。
MSIP改修は90年代中ごろに終了したがF-15Cに対しては現在も継続して近代化対応改修が続いている。

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MSIP対応機と非MSIP機を見比べる上での最大の相違はコックピットに有る。上記写真左はF-15J非MSIP機。右はF-15J MSIP機。F-15CではなくF-15Jのものであるが、コックピット正面パネルの兵装関連パネルがをMFDになっている変更点は同様である。

F-15Cの生産は1992年で終了し、以降F-15E/I/Sストライクイーグル系の生産のみとなった。
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非MSIP機の兵装関連パネル部拡大。アナログ的で拡張性に欠ける。

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■PICTURE

f15yeager.jpg - USAF
f15cwithtu95.jpg - USN