演技解説・写真集
2004年バーズ来日写真集
What's THUNDERBIRDS?
わが国の最友好国アメリカは、ローマ帝国が陸軍大国、大英帝国が海軍大国であるとするなら、エアパワー大国と言えるでしょう。海軍ですら主力は紛れもなく空母航空群であり、イージス艦から発射する巡航ミサイルや艦対空ミサイルも航空兵器です。
そしてそのエアパワー国家の空を支配するUSAFを代表するアエロバティックチームがThunderbirdsです。
サンダーバーズは過去3度来日し、年季の入ったファンは94年の三沢でのエアショーを見られた方が多いでしょうし、屈辱の2004年来日は記憶に新しいかと存じます。
わが国に米空軍が駐留している事もあり、他のアエロバティックチームより比較的情報量が多く、そして馴染み易い存在であると言えるでしょう。
サンダーバーズはネバダ州ネリス空軍基地を根拠地としており、この基地はラスベガスの郊外にあることから交通の便が悪くはなく、またアメリカ最大の観光地にあることから、比較的容易に足を運ぶ事ができます。私も2005年に行って参りましたが、エアショーだけではなく、観光やエンターテイメントも満喫する事ができました。
サンダーバーズの発足は1953年6月1日で、リパブリックF-84Gサンダージェットを使用しました。この戦闘機は朝鮮戦争において制空任務より攻撃機として実績をあげていました。
「Thunderbirds」という名前はネイティブアメリカンの言い伝えに存在する嵐を呼ぶ伝説の巨鳥から由来しますが、使用機が「Thunderjet」であった事も少なからず影響を与えたのではないでしょうか。
翌54年にはF-84Fサンダーストリークに機種を改変。F-84FサンダーストリークはF-84Gサンダージェットとは大きく異なり、エンジンの換装、直線翼を後退翼に変更し、戦闘機の高速化に対応した型でした。
1956年、再び機種を更新。世界初の超音速戦闘機F-100Cスーパーセイバーを使用しました。世界初の超音速戦闘機を使用したアエロバティックチームでした。当時は、なんと超音速突破デモが実施されていました。F-100はしばらくサンダーバーズの機体として使用され続け、59年には初来日。F-100Cは空中給油装置を持たず、機材の移動が困難であったため、板付基地(現在の福岡空港)に展開中であったF-100Dをサンダーバーズカラーに塗装し、11月〜12月中に日本、韓国、台湾、フィリピンで展示が行われました。
1964年にはF-105Bサンダーチーフへと更新されますが、エアショーディスプレイ中に初の墜落事故と、別件の事故が重なりF-105は全機が飛行停止になってしまい、活動の停止を余儀なくされます。そこで、窮余の策として再びF-100(F-100D)に戻り、結局F-100Dは1968年まで使用されました。F-105はわずか6回の展示を行ったのみでした。
翌69年からはF-105で懲りなかったのかF-4EファントムIIでアエロバティック(笑)と、お前らはファントム無頼かと思うような状況が73年まで続きました。よく言えば迫力のある、悪意を持って言えばさぞパワー一辺倒で大味な演技だったのでしょう。
なお、同時期の海軍ブルーエンジェルスもF-4Jを使用してました。悪夢です(^^;
現在見られる白地のカラーリングが確立したのもF-4Eからでした。
1973年オイルショックでさすがの米空軍と言えども燃費が悪いF-4Eをアエロバティックのために維持する事が困難になり、T-38タロンに機種更新されました。F-4Eよりかはいくらかマシとは言え、またも高翼面過重機です。最も他に適任の機がなかった事もありますが。
このT-38を使用中、サンダーバーズは史上最悪の事故を起こす事になります。
1982年1月18日の訓練中、4機ダイヤモンド編隊でループ中に全機が墜落し、同時にパイロット4名も殉職してしまいました。この事件でサンダーバーズは存続の危機に陥りましたが、翌83年にはF-16A
Block15に機種を更新し、復活を遂げました。
ちなみにこの事故は、私の好きな作品ゴルゴ13でも取り上げられました。
サンダーバーズのパイロットだった人物が薬物の乱用でクビになり、後にその人物は治療が済んだと復職を要求。しかし、その望みは退けられました。逆恨みした彼は基地を去る際に機体に細工を施しました。
そして訓練中にリーダー機が突然故障し……。その真相を知ったパイロットの遺族がゴルゴ13に、細工を施した元パイロットの殺害を依頼します。ゴルゴ13は元パイロットを罠に嵌め……。
この話は最後にファンの間では有名なある言葉で締められます。詳しくは本屋へどうぞ。
以上。 ゴルゴ13 57巻「ラストループ」より。
このサンダーバーズのT-38タロン、2005年のネリスエアショーで民間所属の機を目撃したのですが、何故か朝一でどこかへと飛び去ってしまい、写真に残すことができませんでした。残念。
閑話休題。
F-16A Block15に機種更新した当時はまだF-16の配備数が十分ではなく、サンダーバーズは72時間以内に実戦稼動機として戻せる事を課せられますが、サンダーバーズはようやくアエロバティックに適した機体を手にする事ができました。
92年には同機種のF-16C Block32に機種更新。現在に至ります。この先も20年30年と、長くF-16が使われ続けられる事でしょう。
頼むからあのカッコ悪い
こいつにだけは更新してほしくないものです。
使用機材 F-16 Fighting Falcon(Block32)
アメリカ空軍、いや西側世界の主力戦闘機として君臨。総生産数は4000を突破し、様々なアップグレードを受け、中身は原型が無い程進化し未だ生産は継続中です。戦闘経験も豊富で、空対空に限ればおよそ60機航空機を撃墜し、F-16の損害はゼロでした。ほとんどがイスラエルによる戦果です。
アメリカにとってF-16は、どちらかといえばFというよりもA的な性格で空対地が主任務となっています。わが国でも多く見られるこの戦闘機に簡単な説明などもはや不要でしょう。
主力戦闘機を用いるアエロバティックチームは世界的に見ても少数派です。
しかしサンダーバーズの歴史を振り返っても先代T-37を除きその使用機は全て戦闘機です。
サンダーバーズというチームは主力戦闘機こそが相応しいという考え方こそが「世界の憲兵」たるアメリカ合衆国空軍の性格を表していると言えます。
その「世界の憲兵」たる自負はショーの最中にも反映されています。正義、自由、真実、そして流れるパトリオットソング(愛国歌)…。
グラウンドショーでこれをやられるとちょっと勘弁して欲しいというところが本音です。彼らの愛国心と忠誠心溢れる大げさで臭い演技はブルーインパルスの3倍は有ると思ってください。
我々外国人が見るサンダーバーズと米国人が感じるサンダーバーズはまた異質なものであるでしょう。
とはいえ演出面でのサンダーバーズの評価は特A級であると断言できます。フライト中での愛国心溢れる演出は、BGM、アナウンスのセンスとあいまって我々外国人にも感動を与えるほどの素晴らしい出来であり、楽しむためのショーとしてのサンダーバーズは非常に高いレベルにあります。
先にも書きましたがサンダーバーズはまれに来日する事もあり、また、アメリカはわが国から経済的にもとても行きやすい利点があります。
ぜひ渡米されてF-16を使用するサンダーバーズのアエロバティックをその目で見てみてください。
どこまでも「ショー」を追求したその姿勢に驚き、そしてブルーインパルスに慣れた我々日本人には「ともかく速い!うるさい!」を強く感じる、異質な体験が出来る事でしょう。
その際にはなるべくBGMが大きく聞こえる位置に陣取りましょう。サンダーバーズにとって音楽はショーの一部です(これ重要!)。
演技解説・写真集
2004年バーズ来日