ハンガリー空軍博物館 - ソルノク 2010年
Repulomuzeum - Szolnok
ハンガリーは人口1,000万人の小国です。そしてとても軍備の小さな国家です。保有戦闘機はグリペンがたったの14機のみです。(私が訪れた2010年にはMiG-29もありましたが、同年退役)
しかし第一次世界大戦ではオーストリア=ハンガリー二重帝国として協商側として参戦しました(というか寧ろ発端となった当事者)。第二次世界大戦では私たちと同じ陣営である枢軸国側として大きな空軍を擁し、ソ連に踏みつぶされるまで戦いました。そして冷戦時代は共産国家の一翼を担いました。
見てのとおり、ハンガリーはすべて負け側なのですが(笑)、その航空軍事の歴史をつむぐのが、ここ「Repulomuzeum
Szolnok レプロムゼウム・ソルノク」こと、ソルノク
ハンガリー空軍博物館です。展示機はもっぱら冷戦期の航空機で構成されています。特にMiG-21だけは何種類もあり、MiG-21博物館にしたほうがいいんじゃないか。と思うくらいです。「西側」の航空機はここではあまり見ることはできません。見学料は無料です。
(Repulomuzeumは航空博物館と訳したほうが正しいようですが、展示は軍用機しか無いのでここではハンガリー空軍博物館と呼称します。)
■行き方
ハンガリー空軍博物館は、首都のブダペストからおよそ100kmほど東に位置するソルノク(Szolnok)という街にあります。日本人の中で白地図から正確にハンガリーの場所を指さす自信のある人は恐らく半数にも満たないでしょう。ましてソルノクなどという街を知っている方など100人に一人のレベルかと思います。そんな場所の博物館に行くのはちょっと勇気がいりますが、挑戦してみればそれほど難しくありません。
(ブダペスト・ニュガティ駅。実に美しい駅舎です。ヨーロッパの駅は基本的に改札口がありません。その代わり車内で検札します。)
ブダペストからソルノクへ行くにはハンガリー国鉄を使用します。ブダペスト・ニュガティ(西)駅からおよそ1時間〜1時間半です。ハンガリーではあまり英語が通じないのですが、切符は「ソルノク!ソルノク!トゥデイリターン!リターン!(指を二点間往復させて)」これで買えるので大丈夫。あらかじめ、「ソルノク・往復」と書いた紙と、ネットで印刷した時刻表に印を書いて提示すると、よりスムーズです。ハンガリーは物価が安いので往復でも1500円くらいにしかなりません。私は一等車で行きましたが、2000円としませんでした。
無事に切符を買ったはいいのですが、肝心の指定席がハンガリー語で何書いてあるのかさっぱり分かりません(笑) 若い人なら英語が通じるかもしれないと、20代の駅員のあんちゃんにどの車両に乗ればいいのか聞いたのですが、これまたさっぱり通じません。「これ!これ!この座席どこどこ?何番目の車両に乗ればいいの?」身振り手振りでコミュニケーションです。
ソルノク駅前はバスターミナルになっています。空軍博物館行きのバスは7系統とその逆回りの8系統を使います。どちらも1時間に一本の便がで出ています。どっちにのってもだいたい30-40分なので先にきた方にのってしまうと良いでしょう。下車するバス停は7系統は14番目、8系統は19番目の「Repuloter bejarati ut」です。
(バスはソルノク駅から10番までは真っ直ぐ、そこから右回り・左回り環状線に別れます)
私の場合はちょうど遠回りになる8系統のバスを使ったため、30分くらい乗車しても博物館が見えてこないので少し焦りました。近くのオジさんにレプロムゼウム行きたいということを伝えると、バスの運転手さんに事情を話してくれて(オジサンは途中で下車した)、到着したときに教えて貰えました。感謝。
博物館はバス停からは徒歩1分。バスから飛行機が見えるので、すぐに分かると思います。
なお、バスのチケットは運転手から購入することもできますが、ソルノク駅の雑誌店であらかじめ2枚(均一料金)買っておくと楽ちんな上に少しだけ割り引かれます。さすがに、BusとかTwoくらいは通じます(笑)
ブダペスト・ニュガティからは2時間程度みておきましょう。
公式サイト(英語)
http://www.repulomuzeum.hu/ENGLISH.htm
アクセスは残念ながら自動車用の道路情報しかありません。問い合わせメールしたところ、親切丁寧に教えてくれました。空軍博物館の中の人ありがとう。
■固定翼機
Il-18V。ハンガリー空軍博物館に入って最初にお出迎えしてくれるのがこちらのイリューシンIl-18V ターボプロップ旅客機。
フラッグキャリアであるマレブ・ハンガリー航空において36,551時間17,031フライトを終え、1987年からソルノクにて展示されています。
狭くてまともに撮れません...w
J32E ランセン。スウェーデン機で最初に超音速に達した(但し緩降下)戦闘攻撃機。
これはスウェーデン空軍機であり、ハンガリーでは運用されていません。ランセンを見たのはル・ブルージェに続き二度目でした。
Il-28。これもハンガリー空軍機です。
ホーカーハンターF Mk58。スイス空軍アエロバティックチーム「パトルイユ・スイス」の使用機です。地上展示だと分かりにくいのですが、お腹に大きくスイス国旗の十字が描かれています。ハンターはF-5E/Fに機種更新されるまで、実に30年間もパトルイユ・スイスの使用機で有りつつづけました。
Mi-24D。どこにでも普通にあるハインドD型ですが、ハンガリー空軍のラウンデルが描かれています。
そしてもう片方はド派手な特別塗装...!
F-104Gスターファイター。元ドイツ海軍機。海軍ですよ、海軍。クリーグスマリーネ!対艦ミサイルを抱いて海上攻撃任務に従事していました。日本も支援戦闘機化(笑)すればよかっ(ry その後ドイツ空軍を経由し、ハンガリーに展示物として譲渡されました。
F-104Gスターファイター。こちらはトルコ空軍機です。カナディアで製造され、カナダ空軍で運用された後にトルコに売却され、そして今ソルノクを安息の地としています。
JA37DI ・ビゲン。ビゲンの戦闘攻撃機型。いわゆるヤークトビゲン。初めて見る戦闘機でした。
ヨーロッパでは標準的なカナード+デルタ翼を最初に採用し、その上スラストリバーサー付きのビゲンさんは実に美しい戦闘機です。MiG系列機ばかりのこの博物館において、スウェーデン独自の設計思想がまた面白い対比です。
すげえな、これが戦闘機の降着装置だと...!
降着装置って飛行機の部品の中ではとても重い方の部類に入るので、どの飛行機もできるだけ性能に悪影響が無いように簡素につくられています。
その常識に反してビゲンが二重タイヤとした理由は一つ。離着陸性能の向上に他なりません。
ビゲンは前作のドラケンよりも大きく重くなってしまったため、接地面積をできるだけ下げて臨時滑走路に負担を掛けないようにしているのですん(ω)
尾翼の塗装が左右で違っています。インターオペラビリティ(相互運用性)とありますが、これはスウェーデンが中立を放棄してNATOへの参加に踏み切った際に相互運用性が必要とされたため、
ちなみにハンガリー空軍がグリペンを導入したので、どうもおまけとして貰ったとかなんとか(笑)
おいロッキードマーチン、ブラックバードはやく!!!111111!!!!
あ、そうそう。SR-71といえば、ビゲンは世界で唯一SR-71のレーダーロックに成功した戦闘機として知られています。まあミサイル発射しても届かないんですけど(笑)
SR-71は秒速1kmのスピードとステルス性で、そもそも迎撃すること自体が困難である中、スウェーデン空軍は確実にビゲンを指向したのですから、その実力は推して知るべし。
MiG-15bis。 どこにでも有る有り触れたMiG-15bis
MiG-15UTI。 複座型練習機。
MiG-17PF。レーダーを搭載した夜間戦闘機型のMiG-17です。正面から見るとニヤケ具合がちょっとブサ可愛い。
MiG-19PF。レーダーを搭載した夜間戦闘機型のMiG-19です。武装は両翼に吊したK-5のみで機銃が搭載されていません。
インテークのレーダーがなんか可愛い。
MiG-21F-13。MiG-21F-13はハンガリーが導入した最初のMiG-21シリーズです。最初に大量生産された機種なので、その他MiG-21を導入した国もたいていMiG-21F-13を最初に手にしています。ハンガリー空軍を示すラウンデルが現行型とは違います。
MiG-21U。これはMiG-21F-13の練習機型複座機。ちなみに複座機のNATOコードは”フィッシュベッド”ではなく”モンゴル”
MiG-21F-13と並んでました。複座型には機銃がありませんね。
MiG-21PF。シリーズではじめて索敵レーダーを搭載した迎撃機型です。その代わり機銃が無く、ミサイルのみで武装します。
MiG-21MF。MiG-21MFは二機展示されています。片方はドロップタンクとK-13ミサイルによる迎撃仕様。そしてシルバーの方がUB-16-57ロケット弾ポッドを装備した対地攻撃仕様です。
MiG-21UM。これはMiG-21MFの練習型複座機です。
MiG-21bis。シリーズ後期型のMiG-21bisですが、通常爆弾を搭載しています。
同じくMiG-21bisですが、やけに状態が良い機体です。月をバックにした魔女の塗装が。
MiG-23MF。ハンガリー空軍では少数機が運用されていたようです。R-23ミサイルを吊っていますが、後翼が外されてしまっています。
MiG-23UB こちらは複座型。
Su-22M3。誘導弾の運用が可能になったタイプですが、偵察機としても運用されていたようです。
ハンガリーではS字はSzとなるようで、Szu-22M3と表記されていました。
L-39アルバトロス。チェコスロバキア製ですが、ドイツ統一によっていらなくなったL-39を頂戴したそうです。
L-29デルフィン L-39の前の飛行機。やっぱチェコスロバキア製
An-2M。どこにでも有る。
L-200Dモラバ。ハンガリー警察航空隊で運用されてた。とか。
Li-2T。C-47ではありません。ポーランドで生産されたタイプです。
Il-14P。Il-2の後継機型。 うーん、やっぱ旅客機はアメリカに見劣りしますなあ...。
AN-26。輸送機のくせに導体に4ヶ所のパイロンをもち、爆撃機としても運用できました。
Super Aero 45。国立救急航空隊に装備された機体ですって。
Tu-134。これもマレブ・ハンガリー航空の機体。
An-24V。空軍の要人輸送機です。
■回転翼機
Mi-1MU ミル最初の量産ヘリコプターです。ローターもないしちょっと可哀想な状態です。
Mi-4A 明らかにシコルスキーS-55系をパク...もといインスパイアした汎用ヘリコプター。
S-55が西側のヘリ運用の基礎を築き上げたのと同様に、Mi-4もまた東側のヘリ運用の基礎を構築しました。
ちなみにハンガリー陸軍は航空機を運用せず、ヘリは空軍が装備しています。
Mi-2 番号が若返っていますが、Mi-4よりもあとに設計されたヘリコプターです。このMi-2はポーランドでライセンス生産されたものをハンガリー空軍が購入し運用しました。
Mi-8P。Mi-8系列の民間機型。大きなヘリコプターなので16席が設けられた他、トイレや洗面台まで有しています。
Mi-8T。ロケットが搭載された軍用汎用ヘリコプター型。
■屋内展示(屋内といっても、屋根があるだけなのですが)
MiG-17のガンパック。 23mm機関砲2門と37mm機関砲。37mm砲の迫力が半端有りません。
MiG-23用のGSh-6-30 30mm6砲身ガトリングガン。対地攻撃を主目的とした機関砲で、ソ連版のGAU-8簡易版と言ったところでしょうか。
MiG-21MF用のRP21、MiG-21bis用のRP22、MiG-23MF用のSapfir23各種レーダー。
Sapfir23をチラッ。パラボラアンテナと一次放射器が見えます。欧米だとこの世代ではすでにスロットアレイアンテナになっています。
射出座席。
一番最初に紹介したIl-18VのエンジンとAPUです。
MiG-21F-13用のR-11F-300。左がエンジン本体で、右がアフターバーナー機構+ジェットパイプ
Kh-29L。レーザー誘導型のミッソー。Su-22M3用に導入しました。
Bf109G-6のDB605エンジン。Bf109は第二次世界大戦時のハンガリー空軍において主力機として活躍していました。
Il-2M3。2005年にハンガリー最大のバラトン湖から引き上げられたIl-2M3です。たぶん「春の目覚め作戦」で撃墜された機なのでしょう。
U-2。この飛行機好きなんですよね。欲しい(・∀・)