ラーテル
【Ratel】

ラーテルは南アフリカのサンダックアストラル社が開発した装輪装甲車である。「ラーテル」とはアフリカに生息する夜行性のイタチ科の動物で、森林から砂漠まで幅広く生息し、性格はとても凶暴でコブラをも食べる。

1960年代後半、南アフリカ陸軍では今まで使用していたサラセン装甲車の後継となる装甲車を欲っしていた。だが当時、南アフリカではアパルトヘイト(人種隔離政策)が敷かれており、南アフリカは国連から「人類に対する犯罪」と言われるなど国際社会から経済的にも軍事的にも孤立していた。
そこで、次期装甲車は他国からの輸入を行うことはできないため自国での開発する事となった。仏AML装甲車の改良であるエラント装甲車の開発・製造など技術的に経験豊富なサンダックアストラル社による新規開発となり1968年開発が開始された。本車の開発にはもちろん、コストパフォーマンスなどを考慮して民生部品がふんだんに使用される、ファミリー化を前提とした開発等の現在では一般的な、つまり当時では先進的な手法をとっていた訳である。

1974年に最初の試作型、1976年に先行量産型が完成した。ラーテルの基本車体は最初の生産型Mk1、1979年から生産された改良型のMk2、そしてさらに戦訓などを元に改良が加えられたMk3の3タイプが存在する。現在の南アフリカ陸軍では古いタイプの車両は全てMk3への改修がされている。

本車の車体は防弾板の溶接構造で前面装甲が20mm、側面装甲最大10mmとの事で正面装甲は12,7mm弾の直撃にも耐えるという。車内は前部中央に3面を防弾ガラスで囲まれており、戦闘時は防弾板で覆うようになっている。非常に視界が広く作られている操縦手席がある。その直後には、ラーテル20の場合2名用20mm砲塔がある。

シリーズの基本形と位置付けられているラーテル20の搭載機関砲はLIW社のF2・二重給弾式20mm機関砲で射程はAP弾で1,000m、HE弾で2,000mとなっている。ちなみにラーテル20は20mm機関砲を搭載した世界で初めての装輪装甲車である。そして2名用砲塔の後ろには兵員室がある。兵員室はラーテル20であれば7名の兵員が収容でき、装備によっては最大で10名の兵員を収容できる。乗降用のハッチは両側面と車体後部右側にある。さらに兵員室上面にも4枚、後部ハッチへの通路上面にも2枚のハッチとさらに対空射撃が可能な7.62機銃架がある。
そしてハッチは銃弾避けとしても使用が可能である。また、両側面にはハッチの物も含めて4基づつの視察装置と射撃ポートが備えられており。さらに各射撃ポートの下には南アフリカ陸軍が運用しているIMIガリルのライセンス生産版、R4突撃銃の予備弾倉を多数収納できるマガジンラックが標準装備されている。機関室は後部左側にあり、エンジンは上部のエンジン用ハッチを外すことにより、容易に交換できるようになっている。

派生型には、迫撃砲搭載型、指揮通信車型、火力支援型、補修車型、対戦車型がある。(これらについては以下の『派生型』を参照)他には、車体を延長して6輪から8輪にし飲料水や食料などの物資を搭載した補給車、120mm迫撃砲搭載型、砲兵支援車両型が試作されたが、採用まではされなかった。

性能諸元

名称 ラーテル20
製造 サンダック・アストラル社
主任務 兵員輸送
全長 7.212m
全幅 2.516m
全高 2.915m
戦闘重量 18.5t
出力 ブッシングD3256BTXF型6気筒ターボチャージャー付きディーゼルエンジン282HP/2.200rpm
速度 106km/h(整地)
燃料搭載量 430L
航続距離 860km
主武装 20mm機関砲x1(携帯弾数1,200発)
副武装 7.62mm機関銃x3
乗員 4人+7人
実戦配備 不明

派生型

●ラーテル60IFV

ラーテルの砲塔をエラント60装甲車の60mm後詰め式迫撃砲が搭載されている砲塔にした型。360発の砲弾を搭載できる。

●ラーテル12.7mm指揮通信車

ラーテルの砲塔をL4・12.7mm2名用砲塔が装備され、通信能力の向上と神経戦用のスピーカーの搭載等がされた指揮車型。

●ラーテル81


兵員室にターンテーブル式の81mm迫撃砲が搭載された型。96発の砲弾を搭載できる。砲塔は撤去され、ルーフは観音扉型のハッチにされている。

●ラーテル90

ラーテルの砲塔をエラント90装甲車に搭載されているのと同型のLIW社製のGT−90・90mm砲を搭載した火力支援型。

●ラーテル補修車

ラーテル20をベースに補修機材等を搭載した型。

●ラーテルATGM

南アフリカ国境警備隊にて運用されているケントロン社製のスイフトZT−3対戦車ミサイルを3基砲塔に装備した型で88年のアンゴラ侵攻が初陣となっている。ちなみに車内には12発の予備弾を搭載できる。

●クロコダイル

ラーテルを元にして製作された技術実証車両。C-130輸送機での空輸を意識して、車体を低く抑えられ、形成炸薬型地雷に対応するため車体下部の装甲にセラミック板が挟まれている。

配備国

●南アフリカ

ラーテル 1243輌

●ヨルダン

ラーテル(20) 100輌

●モロッコ

ラーテル 60輌〜80輌

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