87式偵察警戒車
87式偵察警戒車は陸上自衛隊の装備する偵察用装甲戦闘車両である。
古くから陸上自衛隊の偵察部隊は、威力偵察(敵の勢力圏で敢えて敵に攻撃させ、展開状況や戦力を探る為の偵察行動)に74式戦車を使用している北海道第七師団を除き、オートバイやジープと言った非装甲の車両しか配備されておらず、偵察部隊と言うよりも斥候であった。その為敵の脅威が有る地域での活動は常に危険がつきまとい、行動に制限が大きかった。そういった事から味方の前進部隊に張り付き偵察、警戒を行い、さらに有る程度の威力偵察も行える装甲車両として、1983年に小松製作所で試作が開始され、まず2両の試作車が完成した。そして1985年から技術試験に入り、1986年の実用試験を経て1987年に「87式偵察警戒車」として正式採用された。
車体は均質圧延鋼板の溶接箱形構造で、装甲防御は小銃弾や砲弾の破片を防ぐ程度である。車内配置は車体前方右側に操縦手席、その左側に前部偵察員席がある。その後方車体中央には砲塔が配置され、その中に車長席と砲手席がある。そして車体後方左側には後方を向いた後部偵察員席が配置されており、その反対の右側にエンジンが有る。車長、砲手、操縦手、前部偵察員は車体前部右側、後部偵察員は車体左側面及び後方のハッチからそれぞれ乗降を行う事が可能である。また操縦手席と前部偵察員席上方にもハッチが備えられている。尚、後部偵察員席では、後部ハッチ上面に設置された外部偵察用TVカメラの映像を映すモニタも設置されており、下車せずとも周囲警戒が可能となっている。
主砲はスイスエリコン社製、KBA25mm機関砲の日本製鋼ライセンス生産品を搭載しており、射距離2,000mで傾斜角30度の25mm厚装甲板を貫徹する能力があり、対地・対空のどちらにも使用できる(ただ後方に向けると俯角が取れない)。また副装備として7.62mm機関銃を主砲同軸に装備している。砲塔上面には砲手、車長用の暗視機能の付いたペリスコープが搭載されており、これにより照準・射撃を行う。その他自衛装備として、砲塔側面に4連装の発煙弾が搭載されている。
偵察警戒車と言う性格上、騒音を押さえさらに軽快な機動力を求めたため、エンジン・サスペンション・トランスミッションは同じ小松製作所製で装輪式の82式指揮通信車と同じ物が搭載されており、6WDと言うのも同じである(82式指揮通信車の項目を参照の事)。乗員は車長、砲手、操縦手、前部偵察員、後部偵察員の計5名である。
本車は性能的にはごく一般的で、また威力偵察に用いるにはやや貧弱な武装と装甲であるが、裸同然であった偵察部隊を装甲化出来たことは大きな進歩と言える。だが、82式指揮通信車と一部の部品を共通化しているにも関わらず、それほど台数を必要としない車両で有るため量産効果が出ず、異常に高い調達価格なのが難点である。
これは自衛隊の体質でも有るが、元々もうけの少ない自衛隊向け商売なので、共通化部分を少なくし出来る限り価格を引き上げたいという、小松製作所の思惑が見え隠れしているとも言える。
本車は1987〜2002年までに95両が調達され、第1〜第13偵察隊の各隊、第7師団戦車連隊と普通科連隊の本部管理中央小隊、偵察教導隊等に配備されている。
名称 | 87式偵察警戒車 |
製造 | 小松製作所 |
全長 | 5.99m |
全幅 | 2.48m |
全高 | 2.8m |
乾燥重量 | 15t |
出力 | 10PBY型水冷ディーゼル 305HP |
速度 | 100km/h(路上) |
燃料搭載量 | 不明 |
航続距離 | 500km |
主武装 | 25mm機関砲x1 |
副武装 | 7.62mm機関銃x1・4連装発煙弾発射機x2 |
乗員 | 5名 |
実戦配備 | 1987年 |
●日本 87式偵察警戒車
95両(2002年)