74式戦車
【ナナヨン】

74式戦車は61式戦車に代わる、陸上自衛隊の第2世代型国産主力戦車である。(しかし、61式戦車と同様、待ち伏せ運用を想定していたので戦車駆逐車ともいえる)。

1964年に部分開発が開始され、1968年3月に実物大モックアップが作られて外観、乗員スペースが検討が重ねられ、1969年6月に「STB-1」、「STB-2」の試作車両が完成、そして1971年2月までその車両を使ってデータを収集した。その結果を基に1971〜1973年に掛けて実用性向上ととコスト低減が図られたSTB-3〜STB-6の第二次試作車両が完成し、1974年9月に「74式戦車」として正式採用された。

車体は全溶接、砲塔は鋳造と61式戦車を踏襲しているが、形状はより低く滑らかな避弾径始となり、遙かに洗練された。
主砲は当時西側標準砲と言えた英国ビッカース車製105mmライフル砲「L7」のライセンス生産品(駐退復座器と装填機構は国産品に換装されている)を搭載、さらに主砲にスタビライザーが搭載され行進間射撃も可能となった。副武装は対地/対空用12.7mm機関銃を車長キューポラと装填主キューポラの間に、対歩兵用に74式車載7.62mm機関銃を主砲同軸にそれぞれ装備、さらに自衛用に発煙弾を砲塔の左右に搭載もしている。
射撃統制装置としてアナログ式弾道計算機が搭載され、車長用キューポラにルビーレーザーレンジファインダーを組み込んだJ3ペリスコープ、砲手用にJ1テレスコープを主砲同軸、J2ペリスコープをキューポラ前面に装備する。主砲発射時は通常車長が標的を選定、照準しその目標データを弾道計算機に入力、射撃する。なお、砲手、車長共に砲の制御は可能であるが車長の制御が優先されるオーバーライド機能が搭載されている。
操縦手用キューポラには暗視装置が搭載され、さらに砲塔横に赤外線照射装置を搭載、夜戦能力も獲得した。
エンジンは61式戦車と同系列の空冷ディーゼルエンジン(このエンジンは必要馬力に応じて気筒数を変更可能であり、同系列で気筒数を減らした物が同時期の車両に多数搭載されている)で、トランスミッションとエンジンが一体化されたパック方式を採用し、それが車体後部に搭載され整備性が向上した。また後部起動輪を駆動する後輪駆動式となった為、61式戦車の様に床面をプロペラシャフトが貫通することが無くなったので、防御の上で有利な全高を下げる事が可能となり、さらにオートマチック化された為操縦が容易になった。もちろん超信地旋回も可能となった。
そして本車の一番の特徴は油気圧サスペンション装置を搭載していることで、油圧を使ってサスペンションのシリンダーを動かし、車高を上下200mm、前後に6度、左右に9度傾けられる事である。これによりより大きな俯角を取ったり、身を低くして遮蔽物に身を隠したり(ハルダウン)、地面の左右の傾斜の補正が可能となった。
その他NBC防御システムの搭載、シュノーケル、延長排気管、防水パッキンの装着により30分限定ながら深度2mまでの潜水渡河能力もある。搭載乗員は車長、砲手、装填手、操縦手の4名。

だが、攻撃力、機動力が大幅に強化されたにもかかわらず、鉄道輸送等の配慮から防御の面ではそれほど強化されていない様であり、試験に於いては自身の持つ105mm砲に”撃破”され行動不能になったという報告もある。
また売りで有った油気圧式サスペンションも現在はかなり改善されているようではあるが、信頼性に難があった。(採用当時、北海道第七師団では冬季のある朝、配備されていたほぼ全ての車両の油圧シリンダーがオイル漏れを起こし、部隊が「全滅」した事がある)。
他に採用直後は間違いなく世界最高の第2世代戦車であったが、世界の趨勢はすでに第3世代戦車に進みつつある時代であり、さらに採用後は殆ど改良が行われなかった事と相成って、相対的に性能の陳腐化が早かった事も欠点と言えば欠点と言える。

本車は1975年から1989年にかけて873両が配備され、現在は90式戦車の登場により年間40両程度の速さで退役しているが、90式戦車の配備数が少ない事を考えると、今後も数の上では主力であり続けると思われる。

性能諸元


名称 74戦車
製造 三菱重工株式会社
全長 9.41m
全幅 3.18m
全高 2.25m
乾燥重量 38t
出力 10ZF22WT型空冷V型10気筒ターボディーゼル 720HP
速度 53km/h(整地)
携行燃料 950リッター+外部200リッター増加燃料タンクが搭載可能
航続距離 300km
主武装 105mmライフル砲x1(携行弾数50発)
副武装 12.7mm機関銃x1
7.62mm機関銃x1
3連装60mm発煙弾x2
乗員 4名
実戦配備 1974年

派生型

●74式戦車(前期型)

●74式戦車(後期型)


太陽光による、砲身熱歪み防止用サーマルスリーブ装着、射撃統制システムの新型弾種への対応、排気管形状変更

●74式戦車(ドーザーブレード搭載型)


車体前面にドーザーブレード搭載。各中隊に1両程度存在。

●74式戦車改(1993年)


熱線映像装置、レーザー警報装置、サイドスカート搭載型。試験改修の4両のみ(不採用)

●78式戦車回収車

●91式戦車橋

●87式自走高射機関砲


配備国

●日本

873両(前後期型)

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