60式装甲車

60式装甲車は陸上自衛隊で初めて採用された兵員装甲輸送車(Armored Personal Carrier、APC)である。

61式戦車に随伴可能な装甲兵員輸送車の開発を、自衛隊にしては珍しく小松製作所と三菱重工に競争試作の形で行わせることが決定し、1956年からそれぞれが開発を開始、翌年1957年に相次いで試作車両を一両ずつ完成させた。同年8月まで試験が行われ、その結果総合的に優れていた三菱重工製の試作車が採用され、第二次試作車の設計を担当することになった。
だが防衛産業育成のため、三菱重工から設計図面が小松製作所にも提供される事が決まり、双方が共に第二次試作車を製作する事になり、さらに小松製作所でも量産の分担がされることになった。第二次試作車は1959年に完成し、試験の結果を元に改良を行い「60式装甲車」として1960年に正式採用された。

車体は均質圧延鋼板の溶接箱形構造をしている。装甲自体は小銃弾や砲弾の破片から、乗員及び普通科隊員を防護出来る程度で、それほど強力ではない。主武装は車体上面に対装甲/対空用として12.7mm機関銃、副武装には車体前面装甲部に対歩兵用として7.62mm機関銃を装備している。車体前方右側に操縦手席、前方左側に前方7.62mm機銃銃手、後方中央に車長席、操縦手席後方右側通路に12.7mm銃手が設けられており、エンジンは空冷ディーゼルエンジンが車体中央左側に配置されており、その下に設けられたトルクコンバータを介してトランスミッションに動力を伝える。乗員は車長、操縦手、銃手x2の4名である。尚、浮航性とNBC防護は付与されていない。
兵員室は車体後方の空間にあり、3名づつ座れる折りたたみ式のベンチシートが相向かいに配置されに、6名が収容できる。隊員の乗降は後部の手動の観音開きハッチから行われる。また兵員室上面にも3枚開きのハッチもある。

本車の性能は現在の目で見ると完全に時代遅れで、本当ならとうの昔に退役していてもおかしくないのであるが、慢性的にAPC不足の自衛隊にとっては貴重な車両であり、今後もしばらく現役でいるものと思われる。

性能諸元

名称 60式装甲車
製造 三菱重工・小松製作所
全長 5.0m
全幅 2.4m
全高 1.89m
乾燥重量 11.8t
出力 8HA21WT空冷V型8気筒ターボ・ディーゼル 220HP
速度 45km/h(整地)
燃料搭載量 250L
航続距離 230km
主武装 12.7mm機関銃x1
副武装 7.62mm機関銃x1
乗員 4名+6名
実戦配備 1960年

派生型

●60式自走81mm迫撃砲

7.62mm機銃を廃止し、後部兵員室に81mm迫撃砲を搭載し自走迫撃砲とした車両(18両)

●60式自走107mm迫撃砲

上記同様に107mm迫撃砲搭載し自走迫撃砲とした車両(18両)

●化学防護車

武装を廃して化学防護車とした車両

配備国

●日本

428両(三菱製220両、小松製208両)

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