原型機。
NKC-135
【ALL - エアボーンレーザーラボ】
(USAF)
NKC-135 ALLはボーイングB707旅客機(初飛行1954年)を原型としたC-135系列機に空中攻撃レーザーの武装を施した研究機である。実質的にはKC-135ストラトタンカーを母体としている。ALLとはすなわちAirborne
Laser Laboratoryの略。
1973年にKC-135にニューメキシコ州Kirtland空軍基地にて出力150キロワットの高出力二酸化炭素レーザーを搭載する改修が行われ、デッキの上部に機銃座のような形で装備した。
同年に地上照射テストを実施された。この試験では高度60mの低空を150ktで水平飛行するレシプロエンジンのMQM-61カルディナル無人標的機がターゲットで、NKC-135はこれを焼き落とし実験を成功裏に終えた。地上での発射とは言え、航空機に搭載したレーザーで航空機を撃墜したのはNKC-135が世界初である。
ミサイル防衛を目的に開発されたAL-1 ABLは攻撃用レーザーに3メガワットの酸素沃素レーザーを用いているが、NKC-135と同原理の二酸化炭素レーザーを測距用に装備している。
1978年には高出力化した400-500キロワットの二酸化炭素レーザーが搭載され、ターゲット追跡システムも大きく改良が施されたNKC-135によって飛行中に艦艇発射型BQM-34ファイアビー標的機を空中で破壊した。
NKC-135にはさらに、警戒機やSIGINT機といった高価値目標を超音速で飛翔する空対空ミサイルから護る事を想定した空対空ミサイル迎撃試験が課せられた。
同78年にAIM-9サイドワインダーを標的としたが失敗している。しかし、1983年。A-7コルセアから発射されたサイドワインダーを撃墜する事に成功し、NKC-135は合計5基のサイドワインダーを破壊した。なお本試験に於いてサイドワインダーは13発が発射されている。
BQM-34ファイアービーを標的とした試験は続けられたものの、照射距離が延びると殆ど表面を焦す程度の効果しか見られず、1983年の末にNKC-135の試験は終了した。記録された“戦果”はMQM-61、BQM-34、AIM-9が5基。
本機は最初から実用を目的とした試験機ではなく、あくまでも技術研究機に過ぎない。その点に於いてNKC-135は十分に当初の役割を果たしたと言える。88年には米国空軍博物館に寄贈され、現在も展示されている。
製造 | ボーイング(機体) |
主任務 | 研究機(エアボーンレーザー) |
全長 | 41.53m(136ft 3in) |
全幅 | 39.88m(130ft 10in) |
全高 | 12.7m(41ft 8in) |
巡航速度 | 819km/h |
最高速度 | 972km/h |
実用上昇高度 | 50,000ft |
エンジン | プラットアンドホイットニー J57 ×4 ターボジェットエンジン 水噴射時61.1kN(6,237kgf) |
固定武装 | 二酸化炭素化学レーザー |
初照射実験 | 1973年 |
乗員 | 航空機運行:3名 レーザーオペレーター:4名 |
生産数 | 1機(KC-135 #55-3123) |
固定兵装・ガン | 空対空兵装 | 空対地兵装 | アビオニクス類 |
二酸化炭素化学レーザー |
原型機。
なし