シュペルミラージュ4000
【SUPER MIRAGE 4000】

シュペルミラージュ4000(スーパーミラージュ4000)はフランス、ダッソー・ブレゲー社が中心となり、どこの国の空軍に発注を受けるでもなく、独自に開発したF-15,14に匹敵する大型戦闘機である。

本機の開発はF-104に代替するNATO4カ国共通戦闘機(ベルギー、オランダ、ノルウェー、デンマーク)FXでダッソー・ブレゲーを代表とするフランス航空業界が候補に上げたミラージュF1がF-16A/Bに完全に敗れてしまった事に始まる。
また、ミラージュ5の設計図を違法に入手、それを改良したイスラエルのクフィルが登場するなど、フランスの主力機、ミラージュ3/5/F1ではもはや対抗するのは不可能であった。
このような背景の元、フランス軍も含む小型戦闘機市場を狙うべく新鋭ミラージュ2000が開発された。
F-16にはミラージュ2000で対抗することが決定したが、世界に冠たるフランス(そう自認している)の戦闘機を世界市場に売り込むには、F-15に匹敵する大型機市場を狙った戦闘機が必要であった。フランスはF-15クラスの戦闘機需要は西側だけで5000機に上ると計算していた。そこで開発されたのが当初デルタ1000と呼ばれたシュペルミラージュ4000である。1979年に初飛行した。

シュペルミラージュ4000は一言で言えば、ミラージュ2000を大型化した戦闘機と言える。
エンジンは初期のミラージュ2000と同一のスネクマM53-5を双発で備え、翼面積は1.5倍に、運用重量は2〜2.2倍、燃料インテグラルタンクは2.5倍に、12のハードポイントに最大8000Kgの武装が可能とペイロードも2.5倍増大した。
また、ミラージュ2000や当時の最新鋭機と同等のカーボン複合材、ボロン複合材を多用し軽量化に努めているとはいえ、重々量化に伴う推力重量比の低下や翼面過重の増大により格闘戦闘能力は低下は確実である。機動性を補完する目的でカナード翼が採用されたが、本来のミラージュ2000に比較し劣っている感は否めない。操縦装置はフライバイワイヤを採用しており4重のバックアップを持つ。油圧系統は4000ポンド/平方インチ2重のバックアップとミラージュ2000と変わらない。

レドームは大型化したことにより、1m以内の大直径のレーダーアンテナの装備が可能となった。大きなアンテナ径ほど長いレーダー視程を持つことができるため、空対空戦闘において大きなアドバンテージを持つことが可能となる。ただし、本機の採用国は無いためプロトタイプはミラージュ2000と同様のトムソンRDMマルチモード・パルスドップラーレーダーが装備されている。

兵装は固定武装としてDEAF30mm機関砲を2門装備、空対空兵装はマトラ社の短射程赤外線誘導のR530、中射程セミアクティブレーダー誘導R550'マジック'及びシュペルR530を装備し、仮に採用されていたならば後のMICAも装備することになっていたであろう。
また、AM39エグゾセ対艦ミサイル、AS30パッシブレーザー誘導ミサイル、各種無誘導/誘導爆弾を装備できマルチロールファイターとしての能力も備えた。

以上のような意欲作ではあったが、あまりのコストパフォーマンスの悪さに唯一本機の採用を評価したサウジアラビアには猛烈に売り込みをかけていたにも関わらずF-15Aの採用を決定。本国であるフランス軍すら興味を示さなかった。結局シュペルミラージュ4000を採用する国は無かった。
結論を言えばシュペルミラージュ4000は確かに強力な戦闘機であり、大型戦闘機であることから拡張性も高く将来性も大きかったであろう。しかし過剰な能力はコストの増大を招き、また20世紀が終わった現在から見ればF-15とF-14の生産数を合わせても2000程度であり、当初の目論見であった5000機は明らかに需要の過剰予測であった。これはF-16やF/A-18、ミラージュ2000も含め、補助用であった小型戦闘機が想定以上に能力が向上した事も一因であろう。
シュペルミラージュ4000は本来輸出用に設計された戦闘機である。事実上の「失敗」であることは否めない。

性能諸元

製造 ダッソ・ブレゲー
主任務 戦闘機・マルチロールファイター
全長 18.6m
全幅 11.0m
全高 5.4m
主翼面積 64m^2
補助翼面積 --
フラップ面積 --
垂直尾翼面積 --
水平尾翼面積 --
乾燥重量 --
最大離陸重量 30,000kg
最大搭載量 8,000kg
燃料搭載量 10,000L
巡航速度 --
最高速度 高空M2.5/海面M1.2
実用上昇高度 --
航続距離 4000Km?
戦闘半径 800Km?
エンジン スネクマM53-5 MIL:53.9Kn AB:88.2Kn
固定武装 DEFA30mm機関砲2門
初飛行 1979年
乗員 1名
生産数 量産なし

固定兵装・ガン 空対空兵装 空対地兵装 アビオニクス類
DEFA30mm機関砲2門 R530
シュペルR530
R550マジック
AM39エグゾセ対艦ミサイル
AS30対地ミサイル
爆弾
RDMマルチモードレーダー


派生型

なし

配備国

なし

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