書評「奇想天外ヒコーキ映画」

副題:映画と現実の間における航空機の「ありかた」を徹底解説!

新聞や低俗週刊誌(失礼!)で航空機の解説に誤まりがあるのは仕方が無い事と割りきっています。ライターが必ずしも航空機に詳しい人だとは限らないからです。しかし、航空機の専門書籍は別。航空機について語るからには、売り物としてそれなりの質を求めます。今回の書評対象である奇想天外ヒコーキ映画は、名前の通り飛行機映画の紹介と矛盾点を面白おかしく書いたれっきとした「飛行機本」です。

横浜駅近くの某本屋で見つけ、目次から「エアフォースワン」の項目を選び出して読んで見ました。

エアフォースワン、ご存知でしょうか。強いロシア再興を志すテロリストにエアフォースワンが乗っ取られるアクション映画です。F-15とMiG-29の空中戦があったり、実際とはかけ離れた動きをしていますが、なかなかカッコイイシーンも多くあります。確かに突っ込みどころ満載でこの手の本には良いネタかもしれません。

さて、そのエアフォースワンの項のF-15の紹介に以下のような文があります。まぁ、言いまわしは違いますが同じことです。

「F-15DイーグルはF-15Eストライクイーグルと言うパワーアップ型があり、初期のイーグルとは見た目のみで中身はまったくの別物となっている。ひょっとしたらエアフォースワンに出てきたF-15イーグルは…」
「F-15Eストライクイーグルかもしれない。」

ストライクイーグルかも知れないって、アンタね…

エアフォースワンに出てきたF-15は単座だぞ!(爆)
おいおい、F-15Eは複座であることすら知らんのか、よくまぁ飛行機の本なんか書くね。
映画に出てきたF-15のテイルレターは「EG」で、れっきとしたF-15Cです。コックピットのシーンもありましたが、F-15Eとは似ても似つかないHUDや計器類でした。
ひょっとしたら、僕の記憶違いで映画に出てきたF-15は複座のF-15Dで同じ複座のF-15Eと間違えてるのかな?
っと思ったら、同ページのイラストにはしっかり単座のF-15Cが書かれています。…アンタ、この程度の区別もできんのかい。



さて,次ぎはMiG-29についての記述、MiG-29の全長は15mでF-16やF/A-18よりも小型とありました。15m!?やけに短いじゃねーか。MiG-29の全長は17mです。まぁ、この程度の間違いは良くある事(?)です。見逃してあげましょう。致命的なのは以下の文。例によって言いまわしは異なります。

「F-15イーグルは1機100億円、MiG-29は1機2000万円」
「エアフォースワンの盾になったF-15イーグル、ここで泣かないのは人じゃない!〜省略〜全く計算に合わないよなぁ〜」

MiG-29が1機2000万円だぁ!?

僕は誤植だと思った。いや、誤植である事を天に願った。しかしその思いもむなしく破られることになる。
「1機2000万円の戦闘機、サラリーマンでもその気になれば買えてしまう〜省略〜自衛隊も買えば良いのに、もっとも日本ならメーカーごと買えてしまいそうだが。」

世の中にはクルマ貧乏言われる車好きの方がいます。ちょっと生活が苦しくなっても、クルマで湾岸線をかっ飛ばすのさ…と。1000万2000万のクルマに命をかけているサラリーマンも少なからずいるはずです。
スポーティな自動車も飛行機も趣味の領域には違いありません。MiG-29を購入して佐賀空港で自家用機として乗りまわしてる人がいてもまったくおかしくありませんよねっ!!

っておい…本気で2000万円だと思ってるのか!!
対かにミグは安い、経済的小国にはミグを選ぶのも賢い選択の一つです。しかし2000万円なんて例は聞いた事がありません。ドイツがMiG-29をお隣オーストリアに1ユーロで売却するという例はありますが、通常MiG-29は20〜10億円で売買されています。
って言うか常識的に考えて2000万円で買えるはずがないでしょう…いったい何をどう考えて勘違いしているんでしょう、この人は。2000万ドルを2000万円と見間違えたのか、円換算でゼロの数を間違ったのか。どちらにしろ、全く気がつかずに書いてしまうのはスゴイ。

わざとじゃねえのか?

もし、この本を見かけたら,ぜひ一読してみてください。今回エアフォースワンの「ごく一部」(あくまで一部ですよ…)にスポットをあてましたが、あくまでも一項目内さらに一部での話しでしかありません。読破したわけではありませんが、恐らく他の映画についても同じようなものでしょう。大いに楽しめる事請け合いです。

あ、そういえばこんな記述も…

B-17 空飛ぶ要塞(フライングフォートレス)
B-29 超要塞(スーパーフォートレス)
B-52 戦略要塞(ストラトフォートレス)

ストラト=戦略 ×
ストラト=成層圏 ○

はぁ、いちいちあげてったらキリがないわ(笑)

文章はそれこそ無知丸出しのマニア以下ですが、各所に挿入されているラフイラストは凄く良い出来。俳優の似顔絵や戦闘機の絵は素晴らしいものがあります。出版社との契約とかがどのように成立しているのかは全く分かりません。が、この人絵がうまくて何も知らない人より知っているからこの本を書いたのではないでしょうか…?(イラストが他人だったら最悪だ。)


で、著者を調べてみると…「渓 由葵夫」氏。
聞いたことありません。で、ネットでこの人の著書を調べてみました。
「奇想天外SF兵器」というものがあるそうで。

その奇想天外SF兵器の書評を色々見て回りましたところ…
「これはひどい、ここまで酷いとは」
「突っ込んでるつもりが逆に突っ込まれる内容」
「過去10年間最も愚劣」
「第10回日本トンデモ本大賞」




奇想天外な本を次々と世に送り出す渓氏。ヤツは一体何者…



(あとがきです)
どうも、渓氏はわざとやっているように思えてなりません。もしホンキで間違えているなら「生粋のアホ」で済みますが、わざととんでもない内容を書いて話題を作ろうとしていたら…読者を大いに馬鹿にする最悪な行為ですよね。いくらなんでも間違えすぎなように感じます。

考えすぎでしょうか?


もどり。