F-15 EAGLE



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「地球上のあらゆる空で、どんな天候でも、どんな相手でも、どんな状況下でも、敵を空から追い落とすこと。」
F-15イーグルという戦闘機はこの一文で全てを表している。
1975年に実働態勢に入ったF-15イーグルはあらゆる点に於いて全ての戦闘機を遥かに凌駕していた。
従来、目視外射程空対空ミサイルを装備する戦闘機は大きく重いレーダーを搭載する必要から、機体は大きく鈍重になる傾向があった。逆に空中機動性を重視すると軽量化のため強力なレーダーを搭載することができず、目視外視程ミサイルの装備は難しかった。「ミサイル万能の時代」と呼ばれる世代の戦闘機は、機動性を犠牲にすることによって目視外交戦能力を達成していたのだ。
イーグルも巨大な戦闘機であり、同時に目視外交戦能力は大型機なら視程160nm(300km)で探知できるレーダーと、統合された戦術電子戦システムの機上搭載、F-15に搭載する事を目的として開発されたAIM-7Fを装備し、高い目視外交戦能力を持っている。
しかし、イーグルは大きな機体ながらテニスコートと揶揄される大きな主翼を持つことによって低い翼面過重を維持し、搭載された二発の強力なエンジンがそれを支える事で、高い旋回能力と速度が失われにくい強力な格闘戦闘能力を実現した。
強力なエンジンが実現する上昇力は凄まじく、1975年には3000mから30000mまでの7つの世界上昇速度記録の全てを塗り替え、現在でも20000mまでの上昇力記録を保持しつづけている。
イーグルは格闘戦闘から目視外視程戦闘まであらゆる状況で高い能力を発揮できる最初の戦闘機であった。
バブルキャノピーの広大な視野を持つこの戦闘機はパイロットからは「格闘戦闘機への回帰」と、大いに歓迎された。

離陸直後に急上昇するイーグル。広い主翼と大出力のエンジン、F-15の高機動性の象徴である。

だが、能力に比例しイーグルは高価だった。採用国はわずかにアメリカ空軍及び州兵、イスラエル、サウジアラビア、日本、韓国だけである。しかし21世紀に入ると既に1500機が生産されたイーグルの単価は下がったため、いくつかの国に売り込みが行われており、韓国はそうした国の一つだった。

イーグルの能力が実証されたのは1979年9月24日、この日の交戦でイスラエルのイーグルはMiG-21フィッシュベッドを5機血祭りに挙げた。以降1981年レバノン紛争では45機の航空機を撃墜、1991年湾岸戦争では39機を撃墜、その他平時の衝突も含め、イーグルに撃墜された航空機はMiG-21,MiG-23,MiG-25,MiG-29,Su-7,Su-17,Su-22,Su-25,F-4E,ミラージュF1,IL-76,PC-9,Mi-8,Mi-24,SA342等、現在に至るまで優に百を超える航空機がイーグルの前に敗北し、イーグル自身の空対空戦闘における損失は皆無であった。ライト兄弟が史上初の動力飛行を行ってから最初の100年の間にはついにイーグルを実戦で打ち負かす戦闘機は出現しなかったのだ。


また、強力なのは戦闘機としてだけではなかった。大幅な改装を受けイーグルとしての空対空戦闘能力を保持したままマルチロールファイター化したF-15Eストライクイーグルは世界初の全天候戦闘攻撃機となり、ペイロード、搭載可能兵装種、戦闘行動半径、強力な空対地レーダー等、他に比類なき世界で最も強力な戦闘攻撃機となった。1989年12月に実働体制に入り、ほぼ1年後の1991年1月には湾岸戦争において貴重な夜間攻撃機として高い戦果をあげた。

1976年にイーグルの配備が始まって以来30年が経過する。この30年間実戦で高い戦果をイーグルは文字通り無敵であったが、戦闘機の技術は進歩し、イーグルのアドバンテージは徐々に失われつつある。
特に最近、重要視されるステルス性などはイーグルにとって皆無に等しい概念である。航空機制御の技術も確実に発展し、格闘戦闘においてイーグルに幾つかの点で上回る戦闘機も多く就役している。
およそ200機が現役であるわが国の航空自衛隊を始め、500機以上が現役であるアメリカ空軍や、100機近いイーグルを調達したサウジアラビアやイスラエル、2005年から配備が始まったばかりの韓国空軍では、今後数十年間、イーグルは航空優勢確保の主役で有り続ける。
イーグル保有国にとって、イーグルの陳腐化を避ける搭載アビオニクスの向上などの近代化改修は必要不可欠である。幸い機体の大きなイーグルは改修の余地が残されており、こうした能力向上如何により最新鋭機と対等以上で有り続けることも可能だ。
しかしながら、先にも述べたとおり最早絶対的なアドバンテージは消え失せてしまっている。世界の憲兵を自認するアメリカ軍にとって「均衡」は許されない。こうした状況を打破すべく開発されたのがF/A-22ラプターである。

F/A-22ラプターの目的は1つ。「地球上のあらゆる空で、どんな天候でも、どんな相手でも、どんな状況下でも、敵を空から追い落とすこと。」つまりはF-15イーグルと同じである。
最大の欠点もF-15と同じく、あまりにも高価すぎであることだ。よって、全てのイーグルを代替する事はできなくなっている。
この事からもイーグルの重要性は今後もしばらく変わる事は無いであろう。

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