F-2 スーパー改


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横浜みなとみらい21パシフィコ横浜にて国際航空宇宙展ジャパンエアロスペース2004が開催されました。
私の地元は幸いにも横浜ですので、足を運んでみることになりました。
各国のメーカーのブースにはミサイル防衛や無人航空機をはじめとした航空機、関連システムが展示されていました。
そして、ロッキードマーチン社のブースには目を疑うような異質な戦闘機の模型と巨大パネルが設置されていました。

その戦闘機の名称は「F-2 SUPER-KAI」

今回はそのF-2スーパー改なる戦闘機の方向性について考察してみたいと思います。



FS飛行隊に配備されている現用F-2Aと、「F-2スーパー改」とのパンフレットに記された重要な相違点は以下の通り。

・ターゲティング能力の拡張を見込んだAESA(アクティブ電子スキャンドアレイ)レーダーへの換装。
・LINK-16 JTIDS/MIDS (データリンクシステム)
・WSO(兵装システム士官)専用化された後席。
・LGB(レーザー誘導爆弾)運用能力
・WCMD(誘導型クラスター爆弾)運用能力
・JDAM(GPS誘導爆弾)運用能力
・AGM-154 JSOW(GPS誘導巡航ミサイル)運用能力
・AGM-88 HARM(高速対レーダーミサイル)運用能力
・AIM-120 AMRAAM運用能力
・AIM-9X サイドワインダー運用能力
・オフボアサイト照準を可能とするJHMCS(ヘルメット照準装置)
・PANTERA FLIR運用能力
・偵察ポッド運用能力

見てのとおり、現在の対艦攻撃専門機的な性格から、あらゆる用途に運用可能なマルチロールファイターへと、ペーパープランのカタログスペック上において大きく変貌を遂げています。

順を追って考察しますと、まずは第一に重要視すべきことは大幅に向上した空対地ミッション。
列挙された空対地兵装の中で唯一JDAMのみは既に予算化が組まれており、航空自衛隊の装備するMk82に装着し、現状のF-2に装備されることが決定していますが、「F-2スーパー改」のイラストや模型に装備されているのはMk83をベースとした1000ポンド級のJDAM(GBU-32)であり、既に予算が組まれている500ポンド爆弾用の誘導キットとは異なります。

500ポンド級JDAM誘導キットの導入を決定した時に明示された用途は某国の特殊部隊や工作員が島嶼などに拠点を確保した場合に対しての使用を想定しています。
その時に他国を攻撃しうる能力を持つのではないかと疑問の声があがったことに対し、航空自衛隊側は、他国の防空網を制圧する能力を保持していないことを理由にあげ否定しました。
ですがF-2スーパー改にはAGM-88HARM対レーダーミサイルの運用が可能とされています。これはつまりある特定国の防空網を一時的にでも制圧できる可能性を持つということに直結します

では、「専守防衛」である自衛隊が、ある「特定国」の防空網を制圧し1000ポンド,2000ポンド級の誘導爆弾を投下する必要性があると考えられる事態とは何か?
最も有力であるのは紛れも無く北朝鮮の弾道ミサイルです。弾道ミサイルを空中で迎撃する技術は未だ未確立であり、現実的ではありません。
最も有効に働くであろうミサイル防衛手段は発射する前に破壊することです。
AGM-154JSOWのような目標から遠く離れた場所から発射できる巡航ミサイル(ただし動力を持たない滑空式のため射程は発射高度に完全依存)も、仮に北朝鮮に攻撃を加える必要性があるとするならば大きく有利に働くでしょう。

またAIM-120及びAIM-9Xも、現在F-2が装備するAIM-7,AAM-3,AIM-9Lに比し格段に性能が向上しているので、北朝鮮上空で作戦を行うには必須の自衛用兵装であるとともにF-15を補完する航空優勢を確保するのに大きな利点をもたらすでしょう。

これらの空対地・空対空兵装を効果的に運用するためPANTERA FLIRの装備やAESAレーダーの換装もあげられているのも見逃せません。
AN/AAQ-33 PANTERA(SniperXR Podとも)は既存のAN/AAQ-13/14 LANTIRNに代わる新型FLIRで、航法・ターゲティングを一つのポッドで行う事が出来ます。
AESAレーダーに関しては既存のJ/APG-1からの換装になりますが、同レーダーが様々な問題を抱え、現時点になっても「未完」であり、ほとんど対艦用の「単能」であることを考えると、そのJ/APG-1レーダーを発展させるよりも、別のレーダーを装備したほうが良いとの考えなのでしょう。
具体的なレーダーの名称はあげられていませんが、F-16block60が装備するAN/APG-80が想定されていると思われます。

以上の改修により多用途任務が行えるようになったため単座が基本のF-2から(F-2Bは練習機)、複座を基本としたパイロットと兵装システム士官の2名による運用となります。


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これらを有効に機能させるには、あたりまえの話ですがその場所に飛行できなければ意味がありません。項目には挙げられていませんが、あきらかに異質なその姿を形作るF-16Block60のようなコンフォーマルタンクの付加も重要な要素です。
F-2は4700リットルの機内燃料を搭載でき、仮にCFTの容量がF-16Block60と同等ならば3400リットルの追加燃料を搭載できることとなり、単純計算で1.7倍の航続距離増と、大幅な戦闘行動半径の延長につながります。またCFTを装備することによりハードポイントに増槽を装備しなくて済めばさらなる兵装の強化が可能であり、増槽を装備すれば、より戦闘行動半径を広げることができるでしょう。
航空自衛隊は空中給油機の配備を決定していますが、アフガン空爆においてF/A-18が航続距離の短さ故に任務の一部をF-14に割り当てざるを得なくなったように空中給油機に頼ることの出来ない他国領空内への侵入にはとても大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、機内燃料タンクの一部を閉鎖しアビオニクス等を搭載するといった改修が行えるため、F-2の中止理由の一つとしてあげられていた拡張性の無さも改善される事につながる可能性はゼロではありません(今ひとつ実用性があるのか疑問ですが)。

さらには偵察ポッド運用能力も付加されておりRF-4E/EJの後継を狙っている事も伺えます。

これらの能力は確かに現在のF-2には無く、同機の運用性能の著しい上昇が見られるであろうが、そもそも高価であるために中止が決定されたF-2の価格をさらに引き上げる事につながるのは間違い無く、F-4EJ/EJ改の後継機として名のあがっているF-15E,F/A-18EF,F-35のような機に対して性能的にもコスト的にもどれほどの優位性があるのか、疑問感を払拭することは出来ません。
そもそも、ロッキードマーチンがこのF-2スーパー改を本気で売ろうとしている事すら疑わしく感じます。

レーダーの換装はともかく、FLIRは既に国産品が航空自衛隊で運用されており、またAIM-120も少数が調達済みですが将来的なアクティブレーダー誘導ミサイルの主力はAAM-4で確定、オフボアサイト攻撃能力を持つ短射程ミサイルもAAM-5が控えている以上、AIM-9Xが採用される事はあっても主力になるのは難しいと言えるのではないでしょうか。
もちろん仮にF-2スーパー改が実用化されるとしても、この案が100%そうなるというわけでもありませんし、AAM-4/AAM-5が高価であるためそれを補完する用途で装備される可能性もあるかもしれません。



(国産のFLIR 居場所はどこに?)

F-2スーパー改、案としてはとても面白いものですが実用化への道は厳しいかもしれません。