AV-8B VTOL操縦訓練
20世紀初頭、「エアパワー:航空戦力」という言葉が誕生して以来、戦闘機の速度と重量は増大し、離着陸に必要な滑走距離も右肩上がりに伸びつづけてきました。
場合によっては数千メートルの直線が必要となる戦闘機。これではおのずと駐屯地が限られてしまう。長距離を滑走せずとも垂直に上昇し不整地からでも運用できれば戦闘機の行動力は倍増するー。上方に向けられたランチャーレールから打ち出されるナチスドイツのロケット戦闘機、真上を向いた状態で離着陸を行うNASAの実験機。これら数十年にわたる研究の答えがハリアージャンプジェットであったわけです。
ゲーム中に登場するAV-8BハリアーIIは初期のハリアーに比べて兵装搭載能力や戦闘行動半径が大きく改善されています。
ハリアーIIにはSTOLモードとVTOLモードと2種類ありますが、ここでは基本的にVTOLモードであることを前提とします。
ハリアーの操縦は決して簡単ではありません。しかし、空中停止のできる戦闘機はハリアーだけです。ぜひマスターして、自由気ままに飛行するなり、観覧車の乗客を驚かせるなりして楽しみましょう。
基本的にAV-8Bが苦手な初心者の方を対象にして書かれています。
■スロットル
VTOLで最も重要なのはスロットルの制御です。空中停止状態の場合はエンジンの推力のみで飛行しているわけですから、雑なスロットル調整=墜落に直結します。
通常、VTOL時のスロットル調整は95〜99%事足ります。搭載兵装や燃料の残量によって機体の重量が変化するため、多少の変動はありますが、90%未満にする必要はほとんどないでしょう(というかしないほうが良い)。上昇時、下降時問わずスロットルを大きく変化させるのは非常に危険なので、スロットルの調整は0.5%ずつ行うぐらいの心構えが必要です。それを絶対に忘れないでください。事実、重量次第では98%で上昇するのに97%では降下してしまうこともあります。
数トンの重量を持つハリアーを石のように降下させた場合、推力を100%に増加させても落下は止まりません。制御された降下と、制御された上昇を心がけるようにしましょう。
■推力ベクトルとエアブレーキ
HUD右下の推力方向を示す数字に注目してください。この数値は0の場合はエンジンノズルが機体に対して真後ろを向いていることを意味し(つまり通常の飛行状態)、90の場合は機体に対して真下を向いていることを意味します。
通常のVTOLモードでは地面に対して垂直にエンジンノズルが動き、自動的に最も効率の良い地面へと垂直にエンジン推力が向くように角度調整されます。つまり機首が水平であらば90、機首のピッチが+5度であらば85と表示され,ピッチ+15度であらばノズル角は75度になります。微妙な機体の角度がノズルによって自動的に補正されるため、比較的楽にホバリングする事ができるようになっています。(本当は機首が水平の場合は89度になります。分かりやすくするために90度と書きました。)
しかし、この自動ノズル調整が逆に邪魔になってしまう場合もあります。停止状態から前進しようと機体をピッチ-5度ほど前に傾けた場合、ノズルは95度となり、前進に必要な推力を得ることができません。逆に後進しようと+5度ピッチを上げたとしてもノズルは85度となり、後進することができません。
そこで必要となるのがエアブレーキです。エアブレーキを展開するとノズルが90度に固定され、ピッチ角によるノズル角度補正が一切行われなくなるため、前進や後進を意図的に行うことができます。また、機首のピッチを大きく上げることによりノズルが前向きになるため、推力をスピードブレーキとして利用することも可能です(それについては次の項目に譲ります)。
説明書に載っていないため見落としがちですが、VTOL操縦に必要な機能であるため、ノズルを90度に固定した際の加速、後進、減速を覚えておいてください。(本当は89度に固定です。)
■ギアブレーキによるノズル固定
ギアブレーキによるノズル固定
エアブレーキを展開しノズルを90度に固定して自由に前進後進の制御が行えることを書きました。次はギアブレーキによるノズル固定です。
ギアブレーキを使用するとノズルは98度に固定されます。この固定モードの利点は推力ベクトルを大きく前方に向けることができるため、推力を大きなブレーキ力として利用できる所にあります。着陸するため、高速度からいったんホバリング状態に移りたい場合等に非常に有効であり、急減速が期待できます。
機首のピッチ角を大きくとればさらに前向き推力が大きくなるため、さらに大きなブレーキ力がかかります。同時に空気抵抗が増大し、さらなる減速効果が加わります。ただし、機首を上げたことにより翼から発生する揚力も増加するためスロットルを若干さげなくてはなりません。翼から発生する揚力は速度の2乗に比例します。速度が下がってからスロットルを増加する必要があります。
なお、エアブレーキモードのノズル固定と併用した場合、ギアブレーキモードによる固定が優先されます。現在の状況と未来の状況をイメージして二つのモードをうまく使い分けてみてください。
■VTOLでの移動
狭いヘリパッドやビルの上などに着陸する際など、微妙な操作が必要とされます。VTOL訓練の最後は移動についてです。
横方向へ移動する際はまずは僅かに機体をロールさせて推力ベクトルをずらします。ずらしたぶん横移動成分の推力が生まれるため徐々に加速しだします。
加速し出したら機体を水平に戻しそのまま慣性で動きつづけます。
最後に停止したい場合は目標空域の手前から進行方向とは逆に機体をロールさせて移動方向へ推力ベクトルをずらします。「飛行機は急に止まれない」徐々に減速するため早め早めに操作を行う必要があります。そして完全に停止する寸前に機体を水平に戻してください。停止してから水平に戻そうとすると、水平に戻すまでに逆方向へ加速してしまいます。
横移動の例をとりましたが、基本的に前進、後進も同様です。
さて、前作エアロダンシングiをプレイしたことのある人ならご存知かと思いますが、こんなミッションがありました。
エアロダンシング4で初めてエアロダンシングをはじめた方、ぜひ、ビルをターゲットに見立てて同じことをやってみてください。
下手すれば10分はかかる手に汗握る展開となるでしょう…終わった後の達成感を味わってください(笑)。
コツとしては、横移動→停止→転回→横移動→停止→転回→…の繰り返しです。必ず方向転換の際に停止するようにしましょう。ハリアーは後ろ向き移動が強くなると制御不能になります。
…以上でAV-8B VTOL操縦訓練を終わります。