演技解説・写真集
新生T-50 Black Eagles TOP
演技解説・写真集
※:A-37ブラックイーグルスはソウルエアショー2007を最後に解散しました
※:現在T-50ゴールデンイーグルを使用しています。
What's BLACK EAGLES?
大韓民国空軍の誇るBlack Eagles(ブラックイーグルス)はセスナA-37Bドラゴンフライを6機使用するアメリカンスタイルのアエロバティックチームでした。
第1回ソウル国際航空宇宙防衛展(96年ソウルエアショー)に展示を行う目的で、韓国空軍の常設的なアエロバティックチームとして95年に発足しました。準戦時国の韓国に戦闘機をアエロバティックに供与することは出来ず、相対的に戦術価値の低いA-37Bが、その使用機として選ばれました。
アメリカンスタイルのチームは構成上どうしてもある程度は機体の性能に依存してしまいますが、A-37Bという飛行機は明らかにアエロバティックに用いるには不適な機種であると言えます。特に大きな欠点は2つ。
欠点1.サイドバイサイドの複座機であるという事。
パイロットは左席のキャプテンシートで操縦を行います。右席はスモークオイルタンクが搭載されているために使用することは出来ません。よって、レフトウィング(2番機)とリードソロ(5番機)は視界の制限を受け、編隊飛行をする面で最も重要であるリーダー機の視認に支障をもたらしています。
欠点2.ウィングチップタンクのタービュランスによりクローズを組めない
より深刻な欠点はウィングチップタンクから生じるタービュランスであり、クローズ編隊を組む事が出来ません。全ての演技はタービュランスを回避するため、高度差を取った上で間隔をあけたルーズ編隊で実施されています。
フレッチェトリコローリで使用されているMB339PANのようにタンクを撤去する事は出来なかったのでしょうか。
直感的に演技を見た事により感じられる性能面もロールレートや旋回が鈍く、それより何よりプロシージャターンが果てしなく長いのがとても気になりました。一度演技を行うと、全然次の演技が始まらないのです。
アクロで失ったエネルギーの回復と再集結は観客の前で行う演技と同等以上に重要な機動ですが、やはりA-37Bのハンデは大きいようです。
T-2ブルーインパルスも同じ様な感じだったんだろうな。などと想像してしまいました。
もっとも直前に見た(といっても1ヶ月以上前ですが)アエロバティックチームが、よりによって世界最高峰のパトルイユ・ド・フランスであったのも、よりそう感じてしまったのかもしれませんが。ヨーロピアンスタイルとは比べる事自体が間違いでしたね。
ブラックイーグルスは99年と06年に2度の事故を経験しており、2度目の事故はまだ記憶に新しく、ちょうどその事故がおきる当日、日本でも岩国基地でも恒例のエアショーが有り、私と同行した方と「ブルーインパルスとブラックイーグルスが相互交流したらどんなに楽しいだろうね。」などと話題にしていましたが、まさかその日に墜落事故を起こすなどとは思いもよりませんでした。
原因は韓国スウォン(水原)空軍基地で行われたエアショーにおいて、ソロの2機による交差機動において空中で接触した事によります。うち1機が墜落、観客に被害は無かったもののパイロット1名が殉職しました。
この事故から僅か1ヵ月後、最新鋭であったF-15Kが墜落、さらに翌年の今年(07年)2月に整備不良によりKF-16が墜落と、1年未満の間に3件もの死亡事故をおこしてしまった韓国空軍は安全基準の見直しを迫られ、老朽化した航空機の早期退役が決定しました。
ブラックイーグルスは既に数年後にT-50ゴールデンイーグルへの機種更新が内定していましたが、前倒しでA-37Bを退役させる事となったため、ブラックイーグルスの解散も同時に決定しました。
最後のフライトは2007年ソウルエアショーで行われました。私が訪れたまさにその日です。
前年の事故をまだ引きずっていたのか、クロスなどの一部の演技は行われませんでしたが、素晴らしい晴天の下内外の観客に韓流のアエロバティックを魅せ、ソウルエアショーの展示を目的として発足したA-37ブラックイーグルスの歴史はソウルエアショーで幕を閉じました。
実はブラックイーグルスの解散は2度目で、1967年から1978年の間、年に1回ソウルで行われた空軍火力展示のために臨時パートタイム編成されたF-5A及びRF-5Aフリーダムファイターを使用する、同名のアエロバティックチームが存在していました。しかし、チームの名称以外の共通点は存在せず、16年もの空白期間の間にF-5A時代の伝統は完全に途絶えてしまっていました。
歴史の空白は停滞ではなく後退を生み出します。A-37ブラックイーグルスの再結成にあたり、特に先述のA-37におけるプロシージャターンの技術不足を多少なりとも解消するためリーダー(1番機)及びリードソロ(5番機)パイロットをブルーインパルスに研修派遣し、その技術を吸収しました。
ローリングコンバットピッチなどは同種の機動は何処の国でもやってる事ですが、この際に参考にしたのかもしれません。何せ名称まで同じです。
2010年にT-50ゴールデンイーグルの調達が完了次第、ブラックイーグルスは三度目の再結成が予定されています。年に1度のみであったF-5A時代、性能不足を技量でカバーしたA-37時代を乗り越え、韓国空軍の新生ブラックイーグルスは、40年目にしてようやくT-50という十分な性能を持った飛行機を手にする事になります。
3年間もの二度目の伝統途絶を埋めるのは容易くはないでしょうが、きっと、強力なブルーインパルスのライバルにまで発展するでしょう。(今度は性能差アドバンテージが逆転します…)
※予定が繰り上がり2009年に復活しました
A-37Bドラゴンフライは、ジェット練習機T-37を軽攻撃機/COIN機化したA-37AにGAU-2
7.62mmミニガンを固定武装として装備し、空中給油プローぷの装備、J85-GE-17Aターボジェットエンジンに換装、機体構造を強化し6Gに耐え得る能力を得た改良型です。
特筆すべきはエンジンで、双発の合計で25.4kNと、レッドアローズで使用されているホークT1(単発)を上回るという見た目を裏切るパワープラントを備えます。
武装も機体の割りに強力で、8箇所のハードポイントに無誘導爆弾、ロケット弾等、最大6000lbs(2720kg)のペイロードを搭載する事ができます。
米国、ペルー、チリ、ドミニカ、コロンビア、エクアドル、ウルグアイ、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル、カンボジア、タイ、旧南ベトナム、韓国と、南米諸国を中心に広く装備され、原型となったT-37の初飛行が1954年と古いにも関わらず、2007年現在も多数の国で現役機として運用されています。
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